強大な力を誇る「帝国」アメリカは、日本や西欧諸国と「非対称同盟」を結んでいる。だがアメリカは同盟国に圧力をかけるだけでなく、ときに同盟国に有利となる政策を自ら選択してきた。大国が小国にゆずる、という一見不可解な現象はなぜ起こるのか? 話題書『帝国アメリカがゆずるとき』著者で国際政治学者の玉置敦彦氏に、アメリカが「ゆずる」現象とその理論、史料収集・読解の裏話、揺れ動く現在の国際情勢について、お話を伺った。(聞き手:岩波書店編集部) 小国に「ゆずる」大国 ――『帝国アメリカがゆずるとき』は、超大国であるアメリカが、対等ではない同盟国の側が明らかに有利になるような施策を取る現象について、そのメカニズムを明らかにした著作です。「犬が尾を振る」ならぬ「尾が犬を振る」という言葉で喩えられるこの現象について、まずはご説明いただけますでしょうか? 歴史的に、大国が小国に対して譲歩するという事例は数多く見ら