淫靡な闇に誘われ、外に出た。くぐり戸を抜けると、爛漫と咲き誇る花桃が闇の匂いと溶けあい、鼻孔をくすぐる。物心つく頃から、夜が好きだった。白昼の陽光は、敏感なワタシの網膜に刺激が強すぎる。だから太陽が空にある内は目を細め、特にすることがなければ横になり、閉じゆく黄昏を待っている。 同居人は、そんなワタシを怠け者と思い込んでいる。 「オマエはイイなぁ、三食昼寝つきで」 そう言われる度、ワタシは心外さに短く抗議する。一時は本気で啖呵を切ることも考えたが、不毛な抗争と速やかに諦めた。人に如何様に思われようが、私は私の流儀を貫くだけ。そんなクールさを評価してくれる人は、探せば外に幾らだって居る。 今日も日がな一日、何もせずゴロゴロしていた。無為でいることを拒絶する人もいるが、ワタシの日中の無為は、夜の勤めのためにある。同居人が昼活動するために夜眠るのと、何も変らない。同居人も最近はそういうワタシを受