書いた人:牟田都子 1977年、東京都生まれ。校正者。図書館員を経て、出版社の校閲部に勤務。2018年からは個人で書籍・雑誌の校正を行う。著書に『文にあたる』(亜紀書房)、共著に『あんぱん ジャムパン クリームパン 女三人モヤモヤ日記』(亜紀書房)『本を贈る』(三輪舎)ほか。 「吉祥寺に越してくればいいのに」から始まった憧れの暮らし初めて吉祥寺を訪れたのは四半世紀前のことだ。料理研究家・小林カツ代さんの店「GREENS/GOOD!S」でお粥を食べて、台所道具を選んだあと、「MIYAKE」でインテリア雑貨を見て、「パルコブックセンター」で分厚く重たい洋書を立ち読みして、お財布はからっぽ、胸はいっぱいで帰路につくことができたら理想的な休日だった。住みたい街はと聞かれたら無邪気に吉祥寺の名前を挙げていた。そんな大学生だった。 20代を図書館員として過ごしたのち、30歳で出版社の校閲部に業務委託契