父の命日が近づいている。今年は十三回忌だそうだ。早いものだ、と思う。 十二年前に死んだ僕の父親は、役者を生業にしていた。 芸名を戸浦六宏*1といった。 父の職業を訊かれ「俳優でした」と答えると「それは御苦労なさったのではないですか」と言われることがある。やはり世間には役者イコール食えないというイメージがあるのだろう。しかし幸いなことに僕は何不自由なく育った。四つ上の兄と二人の兄弟だが、兄が高校に上がると同時に別々の部屋を与えられたし、バカ兄弟は揃って浪人までしてスネをかじり大学まで出して貰った。父にはいくら感謝してもし尽くすことは出来ない。 ただ、父の職業が俳優だということで、生前ひとつだけ困ることがあった。いや、今でもある。例えば、こういうことだ──。 ある日、都心へ仕事の打合せなどで出かける。ところが打合せは思いのほか早く終わってしまい、ポッカリと時間が空く。都心というのは渋谷とか新宿
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