「地震が起きた時間って、何時でしたっけ?」10月21日、午前8時過ぎ。仙台市内の宿舎を出た浦和レッズのチームバスは、名取市内を走っていた。見渡す限りの大平原の中、赤いバスに乗った9人の選手たちは「ここに大勢の人が住んでいたようにはとても見えない…」と率直な言葉を漏らしながら、その目は大事なものを一つも見逃すまいと、丹念に窓外の光景を見つめていた。 と、そのとき、ある選手が小さく「あっ」と言った後、誰にともなく、地震発生の時間を訊いた。 「2時46分だよ」 スタッフが答える。 「あの時計…」 他の8人は、一斉にその選手の目線の先にある時計を見つめた。時計は、名取市閖上(ゆりあげ)中学校の3階建て校舎の正面玄関の上で「2時46分」を指したまま止まっていた。 選手たちはそこに行く前、すでに閖上湊神社に足を運んでおり、慰霊碑の前で手を合わせ、宮司の伊藤英司さんから震災についての話を聞いていた。 大