過疎集落が消滅するとどうなるのか―風説で農村を守ることはできない 横浜国立大学大学院環境情報研究院 林 直樹 2012/10/29/ 14:10 1 はじめに 天変地異とは関係なく、人口の自然減少によって、わが国の山間地の集落の一部、「限界集落」と呼ばれるような辺地の集落が消滅しようとしている。本稿では、消滅の可能性のある山間地の集落のことを「過疎集落」と呼ぶ。その集落の出身者(離村した住民のこと)にとって、ふるさとの消滅は、とてもつらいことである。また、出身者でなくても、わが国の原風景が失われることをさびしく思う人は少なくないはずだ。筆者もまったく同じ思いである。 さて、これに関連して、最近、「過疎集落の農地が消滅すると食料が不足する」、「下流部で大洪水が多発する」といった風説を聞くようになった。下流の都市住民のなかには、不安を感じている人も少なくないと想像する。結論からいえば、これ