人が何かに対価を払う理由というのは大雑把に言って2通りしかないと思っている。不快を解消したい時と、不安を解消したい時だ。 倫理的な理由で支払いたいというのも、良心の呵責という不快を解消するためだし、業界のため、文化のためみたいなお題目も、好きなものがなくなってしまうかも、という不安に根差した理由といえる。 ただし、一口に不安や不快の解消のため、と言ってもそこには強い動機と弱い動機というものがある。上にあげたような良心に根差した理由というのは弱い動機の典型例だろう。こういったものは他に直接的な不安や不快があれば簡単に吹き飛んでしまう。良心のみに頼った商売は成り立たないと言われる所以はここにある。 しかし直接的な不安や不快に対価を払おうという意思は非常に刹那的で、その危機が去った瞬間にスッと熱が醒めてしまう。ギャンブルは不安と不快を同時に解消するという強烈な動機を与えるが、それがあとに残すのは