最近、電車に乗っていると、ときどき壁面上部の広告欄に空きスペースを見かけるようになった。さすがに、つり革広告はまだフルに使われているようだが、少しずつ車内広告の量が減少しているらしい。テレビ局や雑誌社も広告収入の減少で青息吐息の状態だ。 情報というものが無料で手に入る、と広く信じられるようになったのは、20世紀後半のことかもしれない。それまでは、本だろうが新聞だろうが、一応の対価を払って手に入れていた。それが、ラジオが普及し、さらにテレビが後を追って、受信料を取るNHKをのぞく民放はすべて無料で番組を提供する時代になった。これは広告という新しい産業のおかげである。私は子供の頃、テレビが家にきたのをかろうじて覚えている世代に属するが、おそらく40代以下の人たちは、生まれたときから家にTVがあって、無償でさまざまな情報が送られてくるのを、空気を呼吸するのと同じ感覚で受け止めているにちがいない。