今回の教育基本法改正論議においては、凶悪な少年犯罪や規範意識の低下、フリーター・ニート・ひきこもりなど、様々な恣意的「教育問題」が語られ、あたかも教基法を改正することでそれらの問題を解決することができるかのような言説が改正を後押しした。これらの言説の虚妄を突くことは大切であるが、現代の子供たちが抱えている特徴的な「新しい問題」というものはやはりあるのであって、そうした問題をどう語っていいかわからない不安から、安易で短絡的な言説を生み出してしまっている側面もあるように思われる。 今後の長期的な教基法問題を見据えるに当たって、現状において子供たちを取り巻いている個別の問題から対応策を議論し、そこで得られた結論から「この問題を解決するには現状の教育はむしろこのように変えられなければならない」という方針を打ち出し、それをもって「その改正案は現実に対応できないよ」という対抗をするべきではないだろうか