過去100年間に6回も国歌が変わった国がある、と書き出すと、それってどこ、と思われるだろう。正解は、ロシアである。少なくとも世界の主要国の中では、これほど目まぐるしい「ギムン(国歌)」の変遷は例がない。特に、ソ連崩壊からプーチン大統領の治世に至る10年の間には実に2回も変化した。 昨年4月に他界したロシア初代大統領のエリツィン氏は1991年、自ら崩壊させたソ連時代の国歌を、「近代ロシア音楽の父」と呼ばれるグリンカ作曲の「愛国歌」へと転換した。ソ連からの完全なる決別を願ったからだ。が、その曲に合わせた歌詞は結局、生まれなかった。 次のプーチン氏は2000年に就任した後、ソ連時代への郷愁を抱く世論にこたえ、曲をソ連崩壊前の国歌(アレクサンドロフ作曲)に戻し、主語を「ソ連」から「神の加護を受けた愛する祖国ロシア」に置き換えた新しい歌詞にした。それをもって、欧米のメディアは「ソ連への回帰願望」など