本書は東京の自分に問いかける。地方の原発で作り出される電気を頼りに生きる自分の生活を、果たしてどこまで理解しているのだろうか。 本書『白い土地』は、新聞記者である著者が福島県に拠点を置き、そこに生き抜く人々に焦点をあてた人物ルポタージュである。「白い土地」とは、《白地》と呼ばれる「帰還困難区域」の中でも「特定復興再生拠点区域」に含まれない土地を指す。2017年、政府は「特定復興再生拠点区域」での積極的に除染作業を行い、2023年までに避難指示を解除する方針を打ち出した。一方で《白地》では将来住民の居住の見通しが立たない。著者は《白地》に通い続けた。 原子力行政の失敗によって「還れない」とされた土地にはかつて、どのような歴史や文化があったのか。その周辺では今、どのような人々がいかなる感情を抱いて生きているのか。 著者は前書『五色の虹』で、旧満州の最高学府「満州建国大学」の卒業生をインタビュー