産経新聞正論メンバーで第1回正論大賞を受賞した上智大名誉教授の渡部昇一さんが17日、心不全のため86歳で亡くなった。筆者は渡部さんから何度か教育問題や皇位継承問題などでご指導いただいたことがある。渡部さんの大きな功績の一つは、教科書検定で中国への「侵略」を「進出」に書き換えさせたというマスコミ各社の報道が誤りだと指摘したことだ。渡部さんの訃報を機に、昭和57年夏の「侵略→進出」誤報事件を振り返る。 報道もとに外交問題に発展57年6月26日付の新聞各紙は、56年度の文部省(現・文部科学省)による高校などの教科書検定結果を大きく報道した。 朝日新聞は1面で「教科書さらに『戦前』復権へ」「文部省 高校社会中心に検定強化」「『侵略』表現薄める」との見出しで報じ、社会面の「こう変わった高校教科書」と題する検定前と検定後の記述を比較する表で「日本軍が華北を侵略すると」が「日本軍が華北に進出すると」に変