おいしくなくてええんです――。料理研究家の土井善晴さんは、家庭料理についての独創的なアドバイスで知られる。ご飯と具だくさんのみそ汁、漬物の「一汁一菜」を提唱し、レシピを絶対視しない「ええ加減」な調理を呼び掛けてきた。新著『一汁一菜でよいと至るまで』(新潮新書)では、そんな料理哲学が確立されるまでの道のりを振り返っている。 2016年に刊行した『一汁一菜でよいという提案』は大反響を呼んだ。料理に「失敗」はないと強調し、「一汁三菜」(汁物とおかず3品)ではなく、負担の少ない「一汁一菜」を食生活の基本に据えようというメッセージは、日々の食卓の準備に頭を悩ませる人々に励ましとして受け止められた。