第三回 秘密の秘書ちゃん 女秘書を手籠めにした老重役 秘書といえば愛人。そんな淫靡なイメージがいつごろ広まったのかは、はっきりしません。戦前はまだ女性秘書という職種が一般的ではなかったので、おそらくは、女性の社会進出が一気に進んだ戦後のことと思われます。 ただ、戦前の日本でも、ごく少数ながらそれらしき例はあったようで。 大正一五年の読売新聞が報じた、女秘書を手籠めにし、生き恥さらす老重役という記事。 丸の内の大会社に勤める六〇歳の重役が、二二歳の秘書を手籠めにして愛人同然に時計や指輪を買い与えていたことがバレ、警察に呼び出されて大目玉を食ったという内容で、いまならテレビのワイドショーの守備範囲に属するネタです。でも戦前の新聞には、およそどうでもいい庶民のゴシップ記事が、けっこう載ってるんです。どっかのジジイとババアが駆け落ちした、とかね。そんな記事を好きこのんで読んでる私も私です