いつもはそっぽを向かれている相手に不意に胸の内を見せられるとき、これまで心の奥底に閉じ込めていた感情が堰を切ったようにあふれ出そうになるのを感じたことはないだろうか。 それは、「萌える」という感情に出会ったということなのかもしれない。 偶然を積み重ねるなかで 毎朝身支度を整えて職場に急ぎ足で向かう途中、いつもの場所にそのコは物憂げな姿で佇んでいる。 まるで同じ駅のホームで同じ場所にいつも居合わせるような偶然を積み重ねていくなかで、退屈な日常に目をそらせるつもりで向こうに意識を重ねようといつからか試みるようになった。 何か考え事でもしているのだろうか。それとも、待ちわびた相手でもいるのだろうか。 ふとした気まぐれで、声をかけるつもりでそばに寄ってみたことがあった。ところが、視線を合わせる前にいつもそのコは立ち去って僕の目の前から姿を消してしまっていた。 もしかして、あのコも僕のことが気になっ