籘真千歳「スワロウテイル/初夜の果実を接ぐもの」(ハヤカワ文庫) ライトノベルの定義は難しい。定義に縛られず、可愛い女の子さえいればなんでもよしと、あらゆるジャンルや題材、古典から最新の流行まで次々取り込む貪欲(どんよく)さが、その魅力の源泉だろう。その意味で「θ(シータ) 11番ホームの妖精」で電撃文庫からデビューした籘真(とうま)千歳が、SFの老舗ハヤカワ文庫から刊行した「スワロウテイル」シリーズは、SFあり、美少女あり、ミステリーありと、ライトノベル以上にライトノベル的な、「全部入り」の小説だ。 特異な伝染病に罹患(りかん)し、異性との接触を禁じられた人々が、蝶(ちょう)の羽を持った人造人間・人工妖精(フィギュア)をパートナーに暮らす人工島・東京自治区が舞台。人を害する人工妖精の抹殺を使命とする主人公、黒い羽の人工妖精・揚羽(あげは)が、数々の事件を通じ、人に奉仕すべく造られた人