「ジャマヒリア」なるイスラム教を基本とした特殊な直接民主主義体制を謳い、世界第8位の埋蔵量を誇る石油という戦略物資を利用して、そのカリスマ性ゆえの開発独裁により政権を維持してきたカダフィ大佐にとって、実権掌握以来最大の危機である。 ローマ、ウィーン、ベルリンとリビアの関与が疑われるテロ事件が相次いで発生していた1980年代半ばに製作された大人気の娯楽映画『バック・トゥ・ザ・フューチャー』(1985)には、プルトニウムを略奪したリビアのテロリストが登場する。 この頃の欧米では政治に無関心な一般人でもリビアをテロ支援国家と認識していたことの証左でもあるわけだが、そんな敵対関係のため、長い間、米国人はリビアに入国することができず、我々日本人も、観光での入国は決まりきったツアーコースに限られていた。 それでも不便さを忘れさせるだけの魅力を持っていたのが、点在するローマ遺跡の数々。地中海地方にはロー