アイヌは先住民族か。最近まで日本国政府はアイヌを少数民族としてすら認めていなかった。アイヌは同化されて完全に日本人になった、という主張だったのだ。アイヌを含んだ単一民族論というのは、アイヌが「日本人」に完全に同化された、という理解である。同化政策は19世紀に始まり、明治維新以降は積極的に大々的に行われた。しかし注意すべき点は、完全に「日本人」にするのではなく、あくまでも劣等性を刻印した上での「同化」である。アイヌに対する法的差別の根拠となった「北海道旧土人保護法」が1997年まで存続したことに「日本」のマジョリティの意識が端的に現れているだろう。「アイヌ新法」の制定は一定の進歩ではあっても、先住権にはほど遠い。あくまでも少数民族として認められたに過ぎない。 いわゆる「アイヌ新法」の問題点とは何か。この法の正式名称は「アイヌ文化の振興並びにアイヌの伝統等に関する知識の普及及び啓発に関する法律