日本の近海でカニがとれなくなって久しい。かつて日本でズワイガニやケガニの水揚量日本一を誇った鳥取の港からは、いまでも漁船が毎朝出港していくが、専用のクレーンで海の底から引き出される専用のカゴのなかには、いつも二、三匹のカニがいるだけで、そのほかはおぞましい姿格好をした深海魚やビニール製のゴミだけが入っているという現状に、漁師たちは日々落胆を続けている。そのおかげで日本の近海モノのカニなどは、もはや庶民の食卓に並ぶようなものではなく、もっぱら永田町の政治家や上海マフィアの特別な会合で彼らの利害関心に満ちた信頼関係を深めるための特別な道具になってしまった。特に上海マフィアは、近年、道具としてのカニを珍重している。 彼らの世界においては沈黙こそが信頼を示す証跡である。そこでは言葉を用いて交渉することなどは大変無粋なことだと考えられている。観光客向けの違法薬物やニセブランド商品を取り扱う縄張り争い
![カニをポケットに入れて、街へ出よう - sekibang 1.0](https://cdn-ak-scissors.b.st-hatena.com/image/square/9c7b14b0b329a94228a8970c593d3037876a2d8c/height=288;version=1;width=512/http%3A%2F%2Ffarm4.static.flickr.com%2F3507%2F3911565962_8bcc34f191.jpg)