OECD諸国における特殊合計出生率(TFR)と女性の労働力参加率(FLPR)の関係の方向と強さを示す相関係数の値は、1980年以前は負であったが、1980年代を経て1990年代以降、正に転じたことはよく知られている。かつては女性の労働力参加率の比較的低い国が出生率が高かったのが、現在では、女性の労働力参加率の高い国が出生率も高くなっているのである。係数は1980年代に次第に変化し、1986年頃を境に負から正へと逆転している。 これにより欧州諸国やわが国では、「女性の労働力参加の増加はかつては出生率の減少をもたらす傾向にあったが、現在はむしろ出生率増加をもたらし、少子化傾向の歯止めの役割を果たす」といった説が提唱されるようになった。しかしその理論的根拠は曖昧といえる。変化のメカニズムが解明されないまま事実としてそうだからという議論である。有配偶女性にとって常勤の仕事と育児は両立が難しい、とい