目の前で、ひとり、またひとりと同胞が血に塗(まみ)れ、薄汚れた大地に倒れ伏していく。 今や、大神殿前の広場は騎士や兵士、そして無数の市民の死体で足の踏み場もないほど埋め尽くされようとしていた。 ――こんなことに…… その光景を目にして、胸が締めつけられるように苦しくなる。 自分たちの浅はかな決断が、この状況を招いた。それなのに、最大の責任者である我々が今も生き残っている。 自分はこの安全な場所で何をしているのか――強烈な罪悪感がみずからのこころを糾弾する。 しかし、そうした思いをまるで感じず、正反対の感情に支配されている者もいた。 「ええい、何を手こずっておる! 我々と翼人にカセル侯軍が加わったというのに、なぜ敵を圧倒できんのだ!」 大神官長バルタザルは、苛立たしげに机を叩いた。思うように事が進展していないことに、焦りと怒りばかりがつのっていく。 しかも、形勢は徐々に不利なものになりつつあ
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