七十歳にして『愛人』を発表、その名を広く世界に知らしめた作家デュラスの、とにかくカッコいいインタビュー集である。 「何時間も果てしなく続いた」というそのやりとりは、彼女の言葉そのものが美術品であるかのように、どの一行をとってもミステリアス、外連(けれん)味、深い含羞に満ちている。例えば、現代のフランス作家について聞かれれば「誰が読むの?」と一刀両断し、フランスが文化的、政治的に遅れている理由を、「それはサルトル(のせい)だと思う」と堂々と言ってのける。 膨大な注釈があくまで客観的な立場で書かれているのもいい。照らし合わせて読むと、彼女が思い違いをしていたり、あまりにも独善的だったりする箇所が多数見受けられるからだ。 変に反省したり、弱気になったりせず、歳(とし)を重ねるごとにエッヂに磨きをかけ続けるデュラスの生き様は、やはり読み手を魅了する。作家という生き物の生態を観察しているような気分に