前回は、遭難したサン・フェリペ号の積荷没収事件と日本二十六聖人殉教事件について、イエズス会・ポルトガルとフランシスコ会・スペインとの主張が真っ向から異なり、前者は、両事件ともイエズス会・ポルトガルの関与はないと言い、後者はイエズス会の讒言により、フィリピンのサン・フェリペ号の荷物が没収されフランシスコ会の宣教師らが処刑されたと主張したことを書いた。 高橋弘一郎氏の『キリシタン時代の研究』に、イエズス会東インド管区の巡察師*であったアレッサンドロ・ヴァリニャーノがイエズス会フィリピンの準管区長ライムンド・プラドに書き送った書翰の一節が紹介されており、ここではフィリピンの修道士(フランシスコ会士)は日本に来るなと述べている。ヴァリニャーノはイタリア人だが、フランシスコ会のようにヨーロッパのやり方を押し通すような手法には批判的であったという。ちなみに、この書翰は長崎で二十六聖人が処刑された日から