現代という時代をどう特徴つけるかという問題はむずかしいが、誰もが納得する一つの特徴は、人々が不寛容になったことだろう。「こんなやつは許せない」という情念による悪意はネットに溢れている。他罰的な正義によってしか自分や連帯を維持できない人々に溢れているのは、こうしたネットの世界が顕著だが、現実の世界も同じようになってきた。そして、それらが生み出す全体図は、結果としては不合理で不毛な緊張と争いでしかない。どうすればいいのか。 一つには、18世紀啓蒙主義者ヴォルテールの言葉とされている「私はあなたの意見には反対だ、だがあなたがそれを主張する権利は命をかけて守る」という格律が有効であるかのように思える(余談だが、この言葉の典拠は本書にも言及があるが不明である)。そして、森本あんりの新著『不寛容論: アメリカが生んだ「共存」の哲学』はこう謳われている。 《こんなユートピア的な寛容社会は本当に実現可能な