2015年は私にとって最悪の年だった。 『このマンガがすごい!』の《オトコ版》第1位を『聲の形』、《オンナ版》第1位を『ちーちゃんはちょっと足りない』が受賞し、私のオタク文化に対する信頼は木端微塵に粉砕された。 私のオタク文化に対する信頼とは、言うなれば、既成の価値観に囚われない皮肉やユーモア、反権威主義、合理主義にもとづく単純素朴な道徳主義とでも言うようなものだ。笑わないでほしい。いや、やはり笑ってほしい。5年前のことだ。私も当時は20歳そこそこの純朴な若者だったのだ。 “レンデルが好きになれない理由のひとつは、"精神のマズしさ"(「貧しさ」)と書くとなんだかドギついのでこう記す)といったものを感じるからである。 彼女の小説には、美しく魅力的な女、恰好よく立派な男、ヒロイン然とした、ヒーロー然とした人物が、まったくといっていいほど登場しない。女性が出てくると、大抵は中年で醜悪で、太ってい