刑務所の実態や福祉の仕組みについて知るには良書だと思います。残念なのは、服役している障害者の諸問題が、福祉(制度)を使えば問題が簡単に解決できるように書かれていることです。現実は著者が考えているほど簡単ではありません。知的障害があることが判明しても、支援を受けるか、受けないかは本人の意思に委ねられるのが原則です。したがって、福祉サービスを受けるための療育手帳(知的障害がある人のための手帳)の取得についても、本人の了解が得られなくてはなりません。成人になるまで健常者として生きてきた方が自分を障害者として受容することに抵抗するのはふつうであり、療育手帳の取得も簡単ではありません。たとえ、手帳を取得してもそこから先が大変であることは軽度知的障害がある方の支援に携わる人なら知っていると思います。 知的障害があって窃盗を繰り返す人の中には生活に困ってということではなく、ただ衝動的に盗んでしまったり、