「中東」、特に筆者が専攻する東地中海地域の話をするのだったら、2023年はどうしようもないくらい憂鬱で、実質的な水揚げが何にもない年だった。例えば、2月にトルコ南西部とシリア北東部を襲った大震災がそうだったし、「中国の仲介による」イランとサウジの関係改善、シリアのアラブ連盟復帰、など、中東情勢をあくまで国際関係談義として見物しているだけの当事者には大きなできごとがたくさんあったのだが、現場での人民の生活水準の向上や彼らの権利の増進という面ではほめるべきところがほとんどなかった。それどころか、本来「大事」として世界中のみんなが反応すべき2023年上半期の様々な事件を誰もが「見なかったこと」にしたおかげで、10月7日の「アクサーの大洪水」攻勢以来の大惨事を招いたともいえる散々な1年だった。 そんな中、中東のあらゆる主体の中で最も成果の少ない1年を過ごした主体の一つは間違いなくイスラーム過激派で