こうした中、精神科の医師らでつくる「日本司法精神医学会」は、10年前に質の高い鑑定ができる医師を認定する制度を始めましたが、試験に合格し認定を受けたのは、全国に1万6000人あまりいる精神科医のうち54人にとどまっています。 日本司法精神医学会の理事長を務める千葉大学社会精神保健教育研究センターの五十嵐禎人教授は「需要の増加に鑑定医の育成が追いついておらず、知識や経験が浅い医師が携わる機会が増えた結果、質が疑問視される鑑定も散見されるようになった。質の高い鑑定ができる精神科医の養成は重要な課題で、それが刑事裁判の質を高めることにもつながる」と指摘しています。 刑法では、事件当時精神障害などの影響を受けて物事の善悪を判断できない「心神喪失」の状態だと、責任能力がないため不起訴にしたり無罪を言い渡したりしなければならず、物事の善悪を判断する能力が著しく衰えた「心神こう弱」の状態だと、責任能力が