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分析美学の検索結果1 - 40 件 / 107件

  • グルーヴとはなにか - obakeweb

    「グルーヴ[groove]」という音楽用語がある。ファンクやソウルを聞く人ならお馴染み、EWFの「Let's Groove」やFunkadelicの「One Nation Under A Groove」で歌われているアレや、JBの『In the Jungle Groove』やMaceo Parkerの『Life on Planet Groove』に掲げられているアレのことだ。 ヒップホップでサンプリングするためにdigられる、あまり知られていないファンクやソウルのレコードなんかはレア・グルーヴ[Rare groove]とも呼ばれる。スウィング[swing]と並んで、ジャズ発の用語らしいが、ブラックミュージックに限らず、ロックやパンクの楽曲・演奏に対しても使われる用語だ。 グルーヴとはなにか。無難な前提として、グルーヴとは音楽作品(楽曲、演奏、録音)の持つ特定の性質である。問題は、グルーヴィ

      グルーヴとはなにか - obakeweb
    • 「男性が男性に弱みを見せて、茶化しなしにケアしてもらうのはかなり難しい」のでは、という話に共感の声

      難波優輝 @deinotaton 男性が男性に弱みを見せて、茶化しなしにケアしてもらうのはかなり難しい。たんに本人のプライドの問題とかではなく、男の文化のケアの項目にはどうも、一緒に騒ぐとか上手いこと言って茶化し笑い飛ばすみたいな対処療法系しか記載されていない感がある。 2021-06-22 23:33:43 難波優輝 @deinotaton ぼくはかなり意識的に心理療法などからケアの技法を勉強しないと無理と思って勉強し続けていて、そこそこ効力を感じる。男の友人達がちょっと元気になったりするのをみると安心する。けど自分は特例で、男性一般はケアの技法を高めるモチベーションをあんま見出さなさそうで、何か要因がありそうな感じ 2021-06-22 23:38:19 難波優輝 @deinotaton 実際、男性の弱みの見せられなさから生まれるセルフネグレクトはある種の性的魅力につながっているように

        「男性が男性に弱みを見せて、茶化しなしにケアしてもらうのはかなり難しい」のでは、という話に共感の声
      • 美しさを見てとるために訓練が必要であるとはどういうことか|obakeweb

        美的性質や美的知覚について、最近出版されたマドレーヌ・ランサム[Madeleine Ransom]の論文がとてもよかったのでまとめておく。 1 前提:美的知覚美的性質[aesthetic properties]とは、「美しい」「優美だ」「けばけばしい」「退屈だ」「バランスが取れている」など、われわれが芸術作品や自然の風景について語るときによく言及する性質のことだ。こういう性質を見てとったり聞いてとることを美的知覚[aesthetic perception]と呼び、「このモネの絵はバランスが取れていて美しい」みたいなことを言ったり書いたりすることを美的判断[aesthetic judgement]と呼ぶ。 フランク・シブリー[Frank Sibley]の影響下において、分析美学では美的性質に関してふつうふたつのことを前提する。 第一に、対象が美的性質を持つのは、一連の非美的性質を持つおかげで

          美しさを見てとるために訓練が必要であるとはどういうことか|obakeweb
        • 文学の哲学にはどのようなトピックがあるのか - Lichtung

          文学の哲学は、存在論、認識論、倫理学、心の哲学、そして美学から、哲学的に文学を考察する研究ジャンルである。 物語とは何か、物語は人生の何を教えてくれるのか、作者とは誰か、詩的想像力とは何か、フィクションとは何か、詩の深遠さとは何か、キャラクタになぜ惹かれるのか、文学作品はどんな存在なのか、そして、文学とは何か。 本稿は、The Routledge Companion to Philosophy of Literature*1 を参照しながら、主に英米圏における文学の哲学の主要な32のトピックを紹介する。文学の哲学について関心のあるひとがさらに学びを深めるために、あるいは、美学や文学の研究者の方が研究の手がかりとするために役立てばと思う。計三万字強あるので、頭から読んでいただくのもうれしいが、気になるところからすきな順番で読んでもらえればと思う*2。 定義とジャンル 1. 文学の概念 2.

            文学の哲学にはどのようなトピックがあるのか - Lichtung
          • 美的なものと芸術的なもの - obakeweb

            1 美学は芸術の哲学なのか? 2 芸術抜きの美学? 3 美学抜きの芸術? 4 ビアズリー、ディッキー、シブリー 5 美的なものと芸術的なもの、その後 参考文献 1 美学は芸術の哲学なのか? 博士論文(80,000 words)をあらかた仕上げて予備審査に出したので、ゴキゲンのブログ更新。 博論でも取り上げている話だが、私の専門である美学/芸術哲学への入門的な話題としてよさそうだったので、一部ネタを抜粋して再構成してみた。なにかというと、美学と芸術哲学の関係性についての話だ。*1 美学[aesthetics]は、なんの専門家でもない人にとっては「男の美学」「仕事の美学」とか言われるときの流儀やこだわりを指す日常語であり、もうちょっと詳しい人にとっては、芸術哲学[philosophy of art]の同義語だ。英語でも事情は同じらしく、aestheticsが専門だと言えば、artについてなんか

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            • どの活動がなにゆえ「芸術」なのか? - obakeweb

              芸術哲学の(根幹とまでは言わずとも、)代表的なトピックのひとつは芸術の定義である。芸術とはなにか。どこのどれがなにゆえ芸術作品であり、その他のアイテムはなぜ芸術作品ではないのか。 分析美学における芸術の定義史は教科書[1][2]やStanford Encyclopedia of Philosophyのエントリーを読んでいただければ結構なので、ここでは新しめの話を紹介する。*1 芸術の定義とバックパス 芸術の定議論では、制度説や歴史説といったそれなりにもっともらしい立場が現れて以降、おおきなブレイクスルーはなかった。流れを変えたのはドミニク・ロペス[Dominic Lopes]である。2008年の、その名も「芸術の理論なんて誰もいらない」という論文で、ロペスは次のように提起する。 私たちが必要としているのは、芸術[art]の理論じゃなくて、諸芸術形式[the arts]の理論である。気になる

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              • 井奥陽子『近代美学入門』 - logical cypher scape2

                タイトル通り、近代の美学についての入門書なのだが、とても良い本だった。 「芸術」「芸術家」「美」「崇高」「ピクチャレスク」という概念ごとに章立てした5章構成の本となっているが、これらの概念は全て近代に成立した概念である。 「崇高」と「ピクチャレスク」はあまり一般的には馴染みのない言葉だろうが、「芸術」「芸術家」「美」といった、現在の我々にとってはわりとあって当たり前の概念が、歴史的にはそれほど古くない概念であることを示している。 常識だと思っていることを相対化して捉え直すことを目指していて、おおよそどの章も、古代ではどうだったか、近代でどのように成立していったのか、そして、現代的な論点についてどのように考えられるか、という構成をしている。 なので、確かに「近代の美学」についての本ではあるのだが、美学一般の入門書という位置づけで読んでしまってよいと思う。 新書レベルの読みやすさ・分かりやすさ

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                • 関西文化の「偏見をぶつけ合うコミュニケーション」は相手次第で「差別発言」になるから気を付けたい「関東人は"おもんな"とか言ってへんな?」

                  難波優輝 @deinotaton 美学者 / SF作家 / 会社員。修士(文学)。共編著『SFプロトタイピング』(早川書房)。専門は分析美学、クィア/クリップ、ペルソナ、プレイスタディーズ、ネルソン・グッドマン。料理が好き。研究中*香水の美学/時間ニューロクィア/ポルノメディア sites.google.com/view/nambayuuk… 難波優輝 @deinotaton 関東の人と友だちになるにつれ「なんでコンテンツの話ばっかりするんやろ、はやく互いの偏見のぶつけ合いせえへんのかなあ……あれ会話終わったぞ?」という不思議体験を無数に経て気づいた。どうも偏見をぶつけて互いをいじって遊ぶのは関西文化圏限定っぽい。 2023-03-23 01:38:37

                    関西文化の「偏見をぶつけ合うコミュニケーション」は相手次第で「差別発言」になるから気を付けたい「関東人は"おもんな"とか言ってへんな?」
                  • ピクセルアートの美学<br>第1回 ピクセルアートとは何か - メディア芸術カレントコンテンツ

                    メディア芸術領域の現状をより深く、広く伝えるため愛称を「MACC」とし、総合的な広報用ウェブサイト「メディア芸術カレントコンテンツ(MACC)」として令和5年2月13日リニューアルオープンしました。 (https://macc.bunka.go.jp/) 当サイトは、これまでの記事をアーカイブとして掲載しています。 「ピクセルアート」あるいは「ドット絵」という視覚表現がある。ピクセルアートは、1970~90年代のビデオゲームのグラフィックの主流であったおかげで、「レトロなゲームのグラフィック」という含みを持っている。そのいっぽうで、近年では「古くて新しい」ひとつのグラフィック・スタイルとしての地位が確立されつつある。このシリーズでは、そうした現代の動向も含めたピクセルアートの特徴と魅力について紹介していく。第1回は、ピクセルアートとはそもそも何なのかを考える。 eBoy『Rio』(2011

                      ピクセルアートの美学<br>第1回 ピクセルアートとは何か - メディア芸術カレントコンテンツ
                    • 美しいものは喜びに適合している?:美的価値についての適合態度分析 - obakeweb

                      美的価値とはなんぞやをめぐる、最新の研究です。*1 「美しい」「崇高である」「パワフルである」といった美的価値については、しばしばそれによって引き起こされる反応の観点から説明されてきた。すなわち、美しかったり優美だったりして美的に良いものとは、私たちに特別な快楽やら満足やら喜びを与えるものにほかならない。ここでは、ある特別な情動的反応をもたらす能力の観点から、美的価値を持つことが分析されている。 いわゆる美的快楽主義はこの筆頭なわけだが、能力による価値の分析にはいろいろとしんどい点がある。とりわけ、どうやって価値の客観性を担保するのかが問題となる。ワーグナーの美しい楽曲は快楽を与えるとは言うが、クラシックに親しんでいない私にはあんなのちんぷんかんぷんなだけで、特別な快楽は感じられない。私だけでなく多くの人がそうなのだとしたら、なぜワーグナーの楽曲には美的価値があるなどと言えるのか。 快楽主

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                      • 【浸かろうSF沼!】SFの魅力にどっぷりハマりたい方必見。濃厚な長編SF小説についてはてなブロガーの感想を集めました!【後編】 - 週刊はてなブログ

                        週刊はてなブログでは、「【浸かろうSF沼!】」と題した特集で、2020年に発売された「SF小説」をはてなブロガーたちの感想とともに紹介しています。 後編となる今回はSFの魅力にどっぷり浸かりたい方に向け、連作小説集と長編をご紹介します! 【目次】 スピリチュアルと科学が逆転!? 異形のユートピアを描き出す『るん(笑)』 酉島伝法の新刊とあらば買わないわけがない この世界は、コミュニティは確かに存在する。現実だ バグダードの街で繰り広げられる鮮烈なスクラップ & ビルド。イラクSF『バグダードのフランケンシュタイン』 死に直結する暴力の、異常なまでの「日常性」 イラク社会の置かれた過酷な現状の本質を直観的に把握できる、実用的寓話 世界的大ヒットをとばすSF長編三部作の第二部『三体Ⅱ 黒暗森林』が日本上陸 うーむ、面白い まさに王道のハードSF。そして風呂敷広げまくりの大サービス 後続の作品を

                          【浸かろうSF沼!】SFの魅力にどっぷりハマりたい方必見。濃厚な長編SF小説についてはてなブロガーの感想を集めました!【後編】 - 週刊はてなブログ
                        • 「web上で読める哲学系ブックリスト」のリスト - 川瀬和也 研究ブログ

                          web上で読めるブックリストは、独学する際の重要な指針となってくれます。しかし、様々な媒体でバラバラに公開されているため、存在に気づくことがなかなか難しいという難点があります。そこで、ここでは、自分用の備忘録も兼ねて、web上で見つけた哲学系のブックリストを、簡単に分類した上でリスト化することにします。(記事中、敬称は「さん」に統一します。) 最初に読みたい 「哲学を学ぶなら岩波文庫を全部読め」を信じてはいけない理由 https://mitorizu.jp/column/column-interview/philosophy-as-learnable 長門裕介さんのインタビュー。「岩波文庫を全部読め」のような読書指導がなぜよくないのか、古典と入門書の関係をどう考えれば良いかなど、最初に読んでおくと心構えができる。哲学入門者のためのブックリストもある。 分析哲学 分析系の理論哲学関連で、ある

                            「web上で読める哲学系ブックリスト」のリスト - 川瀬和也 研究ブログ
                          • 山野弘樹『VTuberの哲学』(2024、春秋社)書評*機能についての不明点と研究態度へのコメント - Lichtung

                            山野弘樹『VTuberの哲学』(2024、春秋社)は、「本書は、今日のVTuber文化の中で活躍するVTuberの典型的な特徴を抽出し、その特徴をある統一的な観点から体系的に解釈することを試みる著作であ」り(i)、その目論見に従って、全5章にわたりバーチャルYouTuberというアバターをまとった配信者文化についての研究を行うものだ。 本書評は、山野の議論の中核をなすVTuberの定義と、山野の研究態度についての批判を行う。 山野弘樹『VTuberの哲学』(2024、春秋社) https://amzn.to/4aorG8R 「彼女/彼/彼らをVTuberとする!」と私たちは宣言しているのだろうか? 山野は、VTuberをこう定義している。 我々は、「VTuberとしてデビューし、VTuberとして活動状態にあるという条件を満たす任意の配信者が、VTuber文化において「VTuber」という

                              山野弘樹『VTuberの哲学』(2024、春秋社)書評*機能についての不明点と研究態度へのコメント - Lichtung
                            • ポルノグラフィをただしくわるいと言うためには何を明らかにすべきか:資料公開と感想記 - Lichtung

                              はじめに こんにちは。神戸大学人文学研究科、芸術学専修、現在修士課程一年のナンバユウキです。分析美学を手がかりにポピュラーカルチャーの分析と批評を行なっています。 2019年7月13日から翌14日にかけて、東京・代々木の国立オリンピック記念青少年総合センターにて開催された哲学若手研究者フォーラムにおいて、二日目に分析哲学と分析美学からポルノグラフィの倫理的問題の問いの場と、そのわるさの理由を分析する「ポルノグラフィをただしくわるいと言うためには何を明らかにすべきか」を発表しました。 本稿では、第一に、資料公開とその簡単な内容紹介、じぶんの研究における位置づけをご紹介し、第二に、発表した感想を共有します。 今回が修士論文に向けた公での研究発表の第一回でした。研究初期のアイデアを研究会を超えて本稿のようにブログで共有するのは、あまり見たことはないです。一般に修士論文の内容や計画を公に共有するこ

                                ポルノグラフィをただしくわるいと言うためには何を明らかにすべきか:資料公開と感想記 - Lichtung
                              • 『ライザのアトリエ』における複数の「時間」 - 青色3号

                                Twitterで考えながら書いていたこと(以下のスレッド)を整理したエントリです。 https://twitter.com/murashit/status/1404730372273762306 あらかじめことわっておくと: アトリエシリーズはエリー以降やったことがない、つまりシリーズ他作品でどうなっているかは、ごめんなさい、知りません…… 当のアトリエシリーズを含め(以下で説明しているような特殊性をおびた)類例はほかにもあると考えられますが、おれ、そんなにゲームやってないので…… また、この話をもし本作全体の評価につなげるのであれば、最後のほうで言ってる「そのほかの要素とあいまって」の内実やガスト制作チームの意図あたりを詰めなければならないのですが、それはさすがに自分には荷が勝ちすぎる(し、その情熱もねえ!)。ということで、ほとんどこの2つ(以上)の「時間」についての整理のみです。 あと

                                  『ライザのアトリエ』における複数の「時間」 - 青色3号
                                • なぜ「ゲーム研究」が必要なのか? 書籍「ゲーム学の新時代」から読み解く,ゲーム研究からの人文社会科学

                                  なぜ「ゲーム研究」が必要なのか? 書籍「ゲーム学の新時代」から読み解く,ゲーム研究からの人文社会科学 ライター:岡和田 晃 近年,ゲーム研究の本が注目を集めつつある。そんな折,「ゲーム学の新時代 遊戯の原理 AIの野生 拡張するリアリティ」という書籍が2019年3月にNTT出版から刊行された。 4Gamerでもおなじみの徳岡正肇氏も参加している本書は,2018年1月に明治大学で開催されたシンポジウム「ゲーム研究の新時代に向けて」の講演者を中心に,新たな執筆者を加えてまとめられた論文集だ。収録原稿は講演そのままではなく,さらに掘り下げたものになる。 このシンポジウムはそもそも,明治大学のなかに「ゲーム学」の講座を立ち上げようというキックオフイベントだった。諸外国では大学でゲーム研究やゲーム開発の講座が設けられていることも珍しくないが,日本ではまだまだ,そこまでの浸透は見せていないのだ。 4G

                                    なぜ「ゲーム研究」が必要なのか? 書籍「ゲーム学の新時代」から読み解く,ゲーム研究からの人文社会科学
                                  • ノエル・キャロル『芸術哲学』:目次とリーディングリスト - obakeweb

                                    Carroll, Noel (1999). Philosophy of Art: A Contemporary Introduction. Routledge. 最近読んだ、ノエル・キャロル[Noël Carroll]による分析美学の教科書『Philosophy of Art: A Contemporary Introduction』(1999)が、入門としてかなりよさげだったので、紹介記事を書いておこう。 ロバート・ステッカー[Robert Stecker]の『Aesthetics and the Philosophy of Art: An Introduction』(『分析美学入門』)が2010年(初版は2005年)なので、本書は一昔前の教科書になる。ステッカーが幅広いトピックを扱っているのに対し、キャロルが扱うのは基本的に「芸術の定義」だけだ。環境美学、フィクション論、芸術の存在論、

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                                    • 文学解釈における価値最大化理論|スティーヴン・デイヴィス「作者の意図、文学の解釈、文学の価値」(2006) - obakeweb

                                      Davies, Stephen (2006). Authors' Intentions, Literary Interpretation, and Literary Value. British Journal of Aesthetics 46 (3):223-247. [PDF] スティーヴン・デイヴィスによるBJAの論文「作者の意図、文学の解釈、文学の価値」のまとめです。*1 「作者の意図と文学解釈」というホット・トピックにおいて、「価値最大化説」を定式化した重要論文です。同様の立場はそれ以前のDavies (1982)でも提唱されているが、その後出てきた諸ライバル理論を踏まえて書かれたのが本論文。この手の話題で参照されないことはない程度には定番の一本です。 〜〜ここまでのあらすじ〜〜 ウィムザット&ビアズリー(1946)「作者の意図はいりませーん!」【反意図主義】 バルト「作者は死ん

                                        文学解釈における価値最大化理論|スティーヴン・デイヴィス「作者の意図、文学の解釈、文学の価値」(2006) - obakeweb
                                      • 哲学者は認知科学の論文を読むか?|描写の哲学の場合 - obakeweb

                                        描写の哲学はかなり学際的な分野だ。異なるバックグラウンドを持つ研究者たちが、画像という同一の主題を、さまざまなアプローチで扱っている。 2021年6月26日㈯に、松永さん(@zmzizm)主催の「描写の哲学研究会」があり、今年度は「描写の哲学と認知科学」がテーマになっている。もう事前申し込みは締め切っているので宣伝としてはいまさらなのだが、会に先立ちこの話題に関して自分が気になっている点を整理しておきたい。 まずはHPに挙げられている「想定される論点」を引用しよう。 描写の哲学の議論は、心理学や神経科学といった認知科学からどう見えているのか。 哲学者は経験的な研究ぬきに特定の前提を置きがちだが、それは適切なのか。 認知科学者と哲学者の関心の違いは(もしあるとすれば)どこにあるのか 描写の哲学で共有されている諸概念は、認知科学にとって何らかの意義を持つのか。 (2021年度 描写の哲学研究会

                                          哲学者は認知科学の論文を読むか?|描写の哲学の場合 - obakeweb
                                        • 「分析哲学」の使命は”論理の明晰化”にあり – 『フィルカル』編集長・長田怜氏

                                          分析哲学という分野をご存知だろうか。アメリカやイギリスなどの英米圏では、哲学といえば分析哲学のことを指すほどメジャーな分野になっている。日本でも研究が盛んに行われており、3年前には若い世代の研究者が中心となり「分析哲学と文化をつなぐ」をコンセプトとした『フィルカル』という雑誌も創刊された。編集長を務める長田怜氏に、分析哲学とは一般的に思い浮かべる哲学とはどのように違うのか、『フィルカル』とはどのような雑誌なのか、お話を伺った。 分析哲学ってどんな学問? ——まずはじめに分析哲学とはどんな分野か、他の哲学との違いについて教えてください。 おそらく、日本人が思い描く哲学者のイメージというのはドイツやフランスの「大陸哲学」の哲学者だと思います。ハイデガーやデリダなどの大家の哲学者がたくさんいて、彼らが主張していることを丹念に読み解くのが哲学であるというイメージを抱いている方は多いのではないでしょ

                                            「分析哲学」の使命は”論理の明晰化”にあり – 『フィルカル』編集長・長田怜氏
                                          • 「メタバースとは何か?」定義を“作る”ところから考える――京都大学准教授・松永伸司氏インタビュー

                                            「メタバースとは何か?」定義を“作る”ところから考える――京都大学准教授・松永伸司氏インタビュー 「メタバース」の定義とはなんでしょうか? 「人によって定義が違う」「あの人の言う『メタバース』は間違っている」、「ただバズワードとして言いたいだけでは?」……メタバースという言葉が口にされるたび、あれはどういう意味なんだろうかと考えてしまう人は多いはず。 今回Mogura VRでは、「メタバースとは何か」という問いに答えるための道具(=考え方)を提供することを目的として、分析美学とゲーム研究を専門とする京都大学准教授の松永伸司氏に話を伺いました。なお、松永氏にはMoguraが主催した「XR Kaigi 2020」にて「VRはリアルかフィクションか、あるいはその問いは何を問うているのか?」と題した講演を行っていただいています。 本記事では、「メタバースとは何か」を考える前に一歩引き、どのような条

                                              「メタバースとは何か?」定義を“作る”ところから考える――京都大学准教授・松永伸司氏インタビュー
                                            • ゲームとフィクション、重ね合わせの意味と効果 - 『ビデオゲームの美学』から -|西川 圭祐

                                              この記事では書籍『ビデオゲームの美学』 についての私見を述べます。(2020.08.31) 初見の方はぜひ自己紹介とまえがきもご覧ください。 書籍紹介 松永伸司氏の『ビデオゲームの美学』を紹介する。もともとビデオゲームについて考えることが好きだったが、この本をきっかけに、より深い沼に入ることとなった。ずぶずぶである。 本書は分析美学(芸術の哲学)の視点から、ビデオゲームのならではの特徴を明らかにすることを通じて、ビデオゲームを理解するための道具立てを提案している。(分析美学についてはこちらを参照。)その内容は学術的な厳密さがあり、難解なので、本稿ではかなりざっくりとした概要と、本書の意義について私見を述べるにとどめる。より突っこんだ内容については、細かいトピックに分けて後日改めて書いてみたい。 概要までということもあり、本稿は、こうしたゲーム研究、とくに人文学的な領域に馴染みのない方にも読

                                                ゲームとフィクション、重ね合わせの意味と効果 - 『ビデオゲームの美学』から -|西川 圭祐
                                              • 現代アートはわびしいか?|ジャン・ボードリヤール「芸術の陰謀」 - obakeweb

                                                芸術終焉論について調べているついでに、ジャン・ボードリヤール「芸術の陰謀」を読み返した。 「芸術の陰謀」は1996年にパリの日刊紙『リベラシオン』に掲載された短い論考であり、後期ボードリヤールの有名な論考のひとつだ。原書の編集者注記によれば、「世界中で数多くの言語に翻訳され」「当時フランスでは、相当激烈な反応を引き起こした」そう。まぁ、ボードリヤールの書き物はだいたい激烈な反応を引き起こしているのだが。*1 最大限ラフにまとめるなら、「現代アートって、根っからしょーもないのに、『そうそう、ウチらってしょーもないんすよ😉!w』などと開き直り、無知な観客を混乱させ、一周回ってしょうもなくなさそうに見せてるあたり、マジでしょうもない😤」という具合だ。たいへん面白おかしいのは、ここでdisられている同時代(80〜90年代)の現代アートには、ボードリヤールの諸理論に影響されたネオ・ジオやシミュレ

                                                  現代アートはわびしいか?|ジャン・ボードリヤール「芸術の陰謀」 - obakeweb
                                                • 「ブログは名刺」仕事につながるブログ活用とは?【美学者・ナンバユウキさん】 - 週刊はてなブログ

                                                  ブログ「Lichtung」を通じさまざまな活動を行っている美学者のナンバユウキ(id:lichtung)さん。その活動の中でも異彩を放つのが、研究者として培った高い専門知識をもとに依頼者の相談に乗る「美学相談〈ソフィスト〉」です。自身のスキルを生かしたブログ運用は、新たな仕事にもつながっているといいます。 そこで、今回はブログを通じ、キャリアデザインを形作ってきたナンバさんに「仕事としてのブログ活用」についてうかがいました! 【目次】 美学との出会いははてなブログ。美学者がブログを始めたわけ 研究者としてのキャリアデザインを再考する。美学相談の実態に迫る 就職先をブログでゲット!? ブログを通じた新しいキャリア形成 YouTube、Twitter、ブログ。さまざまなプラットフォームを活用する中でブログの位置づけって? 間違って届くこと、が人生を大きく変える。ブログで実現したいこととは? ※

                                                    「ブログは名刺」仕事につながるブログ活用とは?【美学者・ナンバユウキさん】 - 週刊はてなブログ
                                                  • 崩壊しかかっている作品をメタ的な観点から強引にまとめあげる、パワーワード連発のSF問題作──『大絶滅恐竜タイムウォーズ』 - 基本読書

                                                    大絶滅恐竜タイムウォーズ (ハヤカワ文庫JA) 作者:草野 原々出版社/メーカー: 早川書房発売日: 2019/12/19メディア: 文庫『最後にして最初のアイドル』の草野原々による………なんだ? なんだかよくわからないが、とにかく進化と宇宙と時空がめちゃくちゃになって女子高生たちが殺し合ったり時空を歪ませたりする話であり、塩澤氏の帯コメント『草野原々は、至高のSFであることに殉じた。』とあるように、少なくともSFであることは間違いない。 また、18人の女子高生が人類の命運を賭けて異なる進化の道を歩んだ知性ネコとデスゲームを繰り広げる『大進化どうぶつデスゲーム』の続篇である。前作の内容を踏まえ意図的に破壊しにいった作品なので、前作を読んでいるにこしたことはないけれど、前巻の流れは本作でも説明されるし、後の紹介を読んでもらえればわかるようにすべてが崩壊していくので、読んでいなくても問題ない。

                                                      崩壊しかかっている作品をメタ的な観点から強引にまとめあげる、パワーワード連発のSF問題作──『大絶滅恐竜タイムウォーズ』 - 基本読書
                                                    • 「フードポルノ」「貧困ポルノ」…性的じゃないものを、なぜ「ポルノ」と呼ぶのか? 「美学」が教える“一つの答え”(村山 正碩)

                                                      最先端の哲学の議論を用いて身近な物事について考える——。 そんなスタイルの哲学入門書『世界最先端の研究が教える すごい哲学』(総合法令出版)が刊行されました。 たとえば、同書はこんな問題を扱います。 「フードポルノ」や「貧困ポルノ」といった「ポルノ」という語彙を用いた言葉を目にすることが増えましたが、なぜこれらの言葉は性的でもないのに「ポルノ」を含むのでしょうか? 「分析美学」という分野を専門とする村山正碩さんが解説します(本記事は同書の一部を抜粋、編集したものです)。 「ポルノ」を使った言葉の数々 ポルノグラフィ(以下、ポルノ)とは何でしょうか。私たちがこの言葉から思い浮かべるものといえば、アダルトビデオ、エロ本、官能小説など、性的興奮をかき立てるイメージや文章でしょう。 しかし、興味深いことに、近年では性的でないものが「ポルノ」と呼ばれるケースも見られます。これは英語圏で盛んな現象です

                                                        「フードポルノ」「貧困ポルノ」…性的じゃないものを、なぜ「ポルノ」と呼ぶのか? 「美学」が教える“一つの答え”(村山 正碩)
                                                      • 分析美学者から見たポストモダニズム|obakeweb

                                                        こんにちは、ポストモダンおちょくる芸人です。 分析vs大陸のいがみ合いが三度の飯より好きなのですが、ラウトレッジ・美学コンパニオンに「ポストモダニズム(postmodernism)」の項目があったのでかんたんに紹介。 書いているのはDavid Novitzという南アフリカ出身の美学者。描写の哲学やフィクション論で注目すべき仕事をしていた人だが、がんで若くして亡くなっている。 後で述べる通り、そこまで情報量のある論文ではないですが、英語圏の哲学・美学において、フレンチ・セオリーやポストモダニズムがどう扱われているのか関心があったため、読んでみました。 以下レジュメ。 ----------✂---------- 1.ざっくりした歴史■啓蒙思想と近代哲学(16〜17世紀) 王、教会、封建制、貴族制が支配する中世から、個人の理性が重視される近代へ。 数学や論理や実証を通して、誰でも世界について正し

                                                          分析美学者から見たポストモダニズム|obakeweb
                                                        • SFの未来予測はつねに間違っていて、だから正しい | inquire.jp

                                                          UNLEASH×ANONによるSFプロトタイピング特集第二回。今回は、SF研究者・分析美学者であり、最近は座談会「SFプロトタイピング未来学会議」を企画した【難波優輝氏】に寄稿いただいた。「SFは未来なんか知らない」、ただ「多岐する世界を言いまくる」のだと喝破するアツい論考を、心してお読みいただき、あなたもぜひともアツくなっていただきたい。 ─SFプロトタイピング特集編集長・樋口恭介(SF作家) SFは未来を「予測」するのに役に立つ文学なのだ、と科学的技法による未来予測の分析と評価を身上とする未来学(Futurology)は言った。なるほど、SFが描く未来にわたしたちは間違いなく魅惑されてきた。東京の都市のビル群を計算資源として活用される青々とした植物たちが覆い繁茂する。植物たちと人間が言葉の向こうでコミュニケーションを交わそうとする津久井五月『コルヌトピア』(2017年)。資本主義の加速

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                                                          • 酒井泰斗プロデュース「調べ・考え・書き・伝え・集まるための書棚散策」ブックフェア - 『在野研究ビギナーズ』刊行記念(2019.12-)

                                                            2019.12.27『在野研究ビギナーズ』が 第38回「雑学出版賞」を受賞しました。1958年発足の雑学倶楽部の主催による歴史ある賞です。 2019.12.26『在野研究ビギナーズ』が「紀伊國屋じんぶん大賞2020 読者と選ぶ人文書ベスト30」を受賞しました(第三位)。 投票していただいた皆さん、ありがとうございました。 このページは、論集 『在野研究ビギナーズ』 の刊行を記念して開催するブックフェア 「調べ・考え・書き・伝え・集まるための書棚散策」 をご紹介するために、WEBサイト socio-logic.jp の中に開設するものです。 本ブックフェアは、2019年から2020年にかけて、明石書店の協力を得て、紀伊國屋書店、くまざわ書店、ジュンク堂書店 をはじめとする全国の書店にて開催されました。 フェア開催中、店舗では 選書者たちによる解説を掲載した36頁のパンフレットを配布しましたが

                                                              酒井泰斗プロデュース「調べ・考え・書き・伝え・集まるための書棚散策」ブックフェア - 『在野研究ビギナーズ』刊行記念(2019.12-)
                                                            • なぜフィクションなのに怖いのか?どうして怖いのに見たいのか?『ホラーの哲学』

                                                              テレビでやってた『エイリアン』が怖すぎて、見るのを止めてしまったことがある(船長がヤツと遭遇するシーン)。ストロボに照らされ一瞬だけ映ったその姿は、今でもはっきり思い出せる、というか夢に出てくるトラウマだ。 『シャイニング』(小説のほう)は怖くてたまらないのに、どうしても止められず、結局完徹したことがある。物語のラスト、オーバールック・ホテルが迎えた凄惨な朝は、痺れるほどのカタルシスだった。 自分の経験だけど、不思議に感じる。 1. モンスターは存在しないと知ってるのに、どうして怖いのか? 2. なぜ怖いと分かっているのに、ホラーを読むのか? この疑問に、真正面から取り組んだのが、ノエル・キャロル『ホラーの哲学』だ。古今東西の哲学者、研究者、作家の言を引きながら、メジャー・マイナー問わず、映画や小説のホラー作品に共通する原則を考える。この検討の中で、この疑問に一定の解を導き出している。 た

                                                                なぜフィクションなのに怖いのか?どうして怖いのに見たいのか?『ホラーの哲学』
                                                              • 井奥『近代美学入門』の感想 - 9bit

                                                                井奥陽子『近代美学入門』筑摩書房、2023年 ご恵投いただいたもの。いい本なので宣伝も兼ねてレビューする。 全体の感想 本当の初学者(たとえば学部一年生)でも十分に理解できる程度の易しさで書かれている。構成がわかりやすく、言葉づかいや文体もするっと読めて、それでいて重要なポイントがどこかがはっきりわかるようになっている。出てくる例もわかりやすい。 概して帯文はオーバーだったり嘘をついていたりするものだが、この本の「難しいと思っていた美学が、よくわかる」は偽りのない宣伝文句だと思う。 本書には、「読者はこういう理解をしているかもしれないけど、そうじゃなくてこうだよ」というかたちで、想定される誤読をあらかじめていねいに防いでいる箇所がけっこう多い。これはたとえば佐々木『美学への招待』などと比べたときの、本書の際立った美点のように思う。 美学(あるいは哲学全般)は、問題意識や議論の内容が初学者に

                                                                  井奥『近代美学入門』の感想 - 9bit
                                                                • ジェロルド・レヴィンソンと芸術に関する文脈主義 - obakeweb

                                                                  1 ジェロルド・レヴィンソン[Jerrold Levinson]は現在メリーランド大学で卓越教授を務める美学研究者である。音楽の存在論における「指し示されたタイプ説」や、解釈と意図における「仮説意図主義」、芸術の意図的=歴史的定義など、さまざまなトピックにその後のスタンダードとなるような立場を提供しまくっている、キレキレの論者だ。*1 レヴィンソンの芸術哲学の中心をなすのは、「文脈主義[Contextualism]」という考えである。本稿では「美的文脈主義[Aesthetic Contextualism]」という2007年の論文をもとに、レヴィンソンという論者の思想的コアを手短に紹介する。いまや分析美学ではデフォルトといっていい立場である文脈主義の一般的なガイドでもある。 Levinson (2007)は、次のように文脈主義を説明している。 芸術作品とは特定の種類の人工物であり、特定の個人

                                                                    ジェロルド・レヴィンソンと芸術に関する文脈主義 - obakeweb
                                                                  • 最近読んだ本シリーズ:『悪口ってなんだろう』『「美味しい」とは何か』『ケアしケアされ、生きていく』 - 道徳的動物日記

                                                                    図書館で借り、出退勤の電車で流し読みした新書本たち。どの本もdisることにはなるけれど、ちゃんと読めてはいないです。 悪口ってなんだろう (ちくまプリマー新書) 作者:和泉悠 筑摩書房 Amazon 「「からかい」の政治学」や『笑いと嘲り』を読んだ流れで、関連してそうな本書も読んだ。 本書では「悪口は人のランクを下げるから悪い」という主張に基づいて議論が展開されるのだが、悪口の問題の一部や一側面を説明する理論として「ランキング説」を採用するならともかく、まるで悪口の問題がすべて「ランキング説」で説明できるかのような書き振りであるところが微妙だった。少なくともわたしとしては、悪口を言う側としても言われる側としても、ランキングの優劣よりももっと重要なポイントがあるように思える。たとえば悪口を言う人は「相手の痛いところをついてやろう」と思うものだし、悪口を言われる人は自分の弱みを攻撃されるか、逆

                                                                      最近読んだ本シリーズ:『悪口ってなんだろう』『「美味しい」とは何か』『ケアしケアされ、生きていく』 - 道徳的動物日記
                                                                    • 「写真を見ること、写真を通して見ること」を通して見ること|修士論文あとがき - obakeweb

                                                                      はじめに UTokyo Repositoryにて修士論文を公開しました。 リンクは以下です。 http://hdl.handle.net/2261/00079131 「写真を見ること、写真を通して見ること――ケンダル・ウォルトンによる「透明性テーゼ」の理論的射程をめぐって」と題し、写真論を扱っています。 タイトル通り、ケンダル・ウォルトン(Kendall Walton)というアメリカの美学者による写真論を中心としています。 論文の位置づけとしては分析美学内の写真論ということで、「写真とはなにか」という問いから、概念の分析、条件の確認、反論の整理、ポイントごとの擁護&反論と、一歩ずつ前進するようなanalytic styleをとっています。 内容としても、仮想敵となるのは「写真は死んだんじゃ〜」と言ってちゃぶ台をひっくり返すタイプの言説です。語尾が「ポモ〜!」な人たちによって、「写真と

                                                                        「写真を見ること、写真を通して見ること」を通して見ること|修士論文あとがき - obakeweb
                                                                      • 漫画(VTuber)研究者の読む『青春ヘラ』Vol.7「VTuber新時代」~その②~ - izumino’s note

                                                                        どうも、漫画研究者としては『ユリイカ』の2008年6月号にて商業デビューし(初期は「イズミ」名義)、後に『ユリイカ』の2018年7月号でVTuber論が掲載されることにもなった、泉信行と申します。 参考:2015年時点までの発表まとめ(PDF) izumino.hatenablog.com 前回から取り上げている同人誌、『青春ヘラ』Vol.7「VTuber新時代」ですが、自分は21日の東京のイベントではなく関西のイベントでフライング気味に購入できていましたので、内容の評価の公開はしばらく控えることにしていました。 イベント後も5月24日発送予定の通販が全国区の入手チャンスとして残っていますが、全3回の予定でエントリ化を始めています。 前置き これらのエントリの草稿としているのは、あくまで「研究目的のメモ」であり、建設的な批判検討が主になっています。 なので、取り上げない記事もありますし、面

                                                                          漫画(VTuber)研究者の読む『青春ヘラ』Vol.7「VTuber新時代」~その②~ - izumino’s note
                                                                        • nix in desertis:書評:『世界哲学史』7・8巻(ちくま新書)

                                                                          5・6巻の書評はこちら。 7巻「近代Ⅱ 自由と歴史的発展」 19世紀を扱った巻。よく19世紀が1冊に入りきったなというのが読む前の印象で,やっぱり無理があったかなというのが読後の印象である。サブタイトルの通り,大テーマはほぼヘーゲルとマルクスであって,その通りに論じているのはテーマ紹介の第1章の他,2〜4章まで。それもヘーゲルとマルクスを直接扱っているのは4章のみだった。後述するが,本巻のサブタイトルは「啓蒙思想・観念論からの跳躍」とした方が実態に即していた。なぜこのサブタイトルになったのか,第1章を読んでも理解できない。 個々の章で面白かったのは第3・4章。3章はショーペンハウアーとニーチェについて。ショーペンハウアーの思想は全然詳しくなかったのだが,本章で得た理解だけで言えば,本章自身でそう触れられている通り,ものすごく仏教思想に近くて驚いた。ショーペンハウアーがどの程度インドに触れて

                                                                          • 分析美学FAQ - 9bit

                                                                            文献を読まずにインターネットだけでお手軽に分析美学について知りたい人向けです。以下すべて私見です。 分析美学とは何ですか? 美学とは何ですか? 芸術哲学とは何ですか? 大陸美学とは何ですか? 分析美学の「分析」とは何ですか? 分析美学を使って作品を分析したいのですが 分析美学を使って批評したいのですが 大陸美学/美学史研究/表象文化論などと仲が悪いのですか? 分析美学は流行ってるのですか? 分析美学とは何ですか? いくつか答え方があります。個人的には、めんどくさいときには1つめを、実質を伝えたいときには3つめを答えます。 英語使用圏を中心にした現代の美学・芸術哲学のことです。言い換えると、よくも悪くもグローバルに支配的になりつつある、美学史ではない普通の意味での美学・芸術哲学です。 分析哲学の美学・芸術哲学版です。 美・芸術・感性などについて哲学的に考える特定の学統です。具体的には: ジャ

                                                                              分析美学FAQ - 9bit
                                                                            • わたしたちが『ビデオゲームの美学』を読むこと - 青色3号

                                                                              フィールド上で方向転換する。コンピューターが接続されているテレビ画面の左上四分の一に草原が映っている。画面の下半分はぼくら一同に関する情報で埋め尽くされている。ヒットポイント、アーマーポイント、スペルポイント、装備中の武器。画面の右上四分の一には今のところ何も出ていないが、いずれ遭遇した敵の情報で埋まり、戦闘に関する数字情報がスクロールし、ゲームがぼくたちに伝えるさまざまな言葉のメッセージが表示されることになる。 ──マイケル・W・クルーン『ゲームライフ』1 先日の『デジタルゲーム研究』の感想のなかで、人文系のビデオゲーム研究について(なかでも、いわゆるゲームスタディーズを念頭に置いて)「自分はこういうのっておもしろいと思ってるんだよな」と書きました。今回はその掘り下げも兼ね、『ビデオゲームの美学』という書籍をやや詳しく紹介してみようと考えています。表題2のとおり、「わたしたち」が読むもの

                                                                                わたしたちが『ビデオゲームの美学』を読むこと - 青色3号
                                                                              • ホラーとはなにか|ノエル・キャロル『ホラーの哲学』、ジャンル定義論、不気味論 - obakeweb

                                                                                ノエル・キャロル『ホラーの哲学』の邦訳が出版され、訳者の高田敦史さん(@at_akada_phi)より一冊ご恵贈いただきました。ありがとうございます。大好きな本がまたひとつ日本語で読めるようになったということでたいへんうれしいです。内容としてもキャッチーで面白いので飛ぶように売れてほしいところですね。 ホラージャンルについての理解が深まるだけでなく、一般的に分析美学や、あるジャンルを哲学的に論じていくやり方について学べるよい本です。個人的には、ブログに載せたRed Velvet論や『ユリイカ』に書いたビリー・アイリッシュ論でも批評のとっかかりとして役立った本なので、「批評に使える分析美学」のレアな一例かもしれません。 かいつまんで論旨を確認した後、個人的に気になるふたつの論点についてかるく解説しましょう。ひとつはジャンル定義におけるキャロルのスタンスについて、もうひとつはより近年の展開とし

                                                                                  ホラーとはなにか|ノエル・キャロル『ホラーの哲学』、ジャンル定義論、不気味論 - obakeweb
                                                                                • デレク・マトラバーズ、作者の意図とその報告について - #EBF6F7

                                                                                  最近、芸術実践における作者の意図の役割がまたもや話題になっている。 そのきっかけはさておき、私は人々の意図理解が気になっている。 とりわけ、自分の意図に関する作者の報告の受け止め方に関して。 みんな作者の意図の役割についてよく議論するのに、そもそも意図とは?という話になかなかならないから、意図というものがどう捉えられているのかずっと気になっている。 意図はすべて意識的か、一人称特権はいつでも認められるか、それは言語化可能性を含意するか、等々— Masahiro Murayama (@Aizilo) 2021年8月27日 ある人が作品の意味は作者の意図が決定すると言ったとしよう。 作品の意味を特定することが鑑賞/批評のやりがいのあるプロセスだとして、この人の意見は魅力に乏しく聞こえるかもしれない。 作品の意味を突き止めたいとき、私たちはただ作者に尋ねればよいと言うのか。 そんなことして、何が

                                                                                    デレク・マトラバーズ、作者の意図とその報告について - #EBF6F7