「宣告」などの小説で知られる作家で精神科医の加賀乙彦(かが・おとひこ、本名=小木貞孝=こぎ・さだたか)さんが1月12日、老衰のため死去した。93歳だった。葬儀は近親者で行った。 東京都出身。陸軍幼年学校在学中に敗戦を迎え、戦後、東京大医学部を卒業。東京拘置所医務部技官などを経て、1967年に「フランドルの冬」を刊行した。 死刑囚の心理を描き、信仰と人間の救済を見つめた「宣告」で日本文学大賞、「帰らざる夏」で谷崎潤一郎賞、自伝的な大河小説「永遠の都」で芸術選奨文部大臣賞を受賞。日本ペンクラブ副会長などを務めた。日本芸術院会員、文化功労者。 戦争や脳死、死刑制度など社会問題にも発言。2006年にはオウム真理教の松本智津夫元死刑囚(麻原彰晃)に弁護団の依頼で面会し「混迷状態で、裁判遂行は不可能」と述べた。〔共同〕