ウクライナへの全面侵攻を続けているロシア。今後、核兵器を使用するのではないかという懸念も強まっており、世界各国がロシアの軍事動向を注視している。 ここでは、軍事アナリスト・小泉悠氏の著書『現代ロシアの軍事戦略』(筑摩書房)から一部を抜粋し、ロシアの核戦略について紹介する。(全2回の1回目/後編に続く) ◆◆◆ 破滅を避けながら核戦争を戦う ソ連は1983年、NATOが核兵器を使用しない限り核使用には訴えないとする「先制不使用(NFU)」を宣言したが、これはソ連を中心とするワルシャワ条約機構軍の通常戦力がNATOに対して優勢に立っていたからできたことである。 これに対して、ワルシャワ条約機構軍の全面侵攻を通常戦力のみで阻止するのは困難であると見ていたNATOは、「柔軟反応戦略」を採用し、開戦劈頭に西ドイツ国内で戦術核兵器を使用することで通常戦力の劣勢を補う方針を基本としていた。 ところが、ソ