前回私が対談を行った南直哉氏は、非常にラジカルな仏教僧であった。けれど、話は大変おもしろく、どんどん引き込まれた。 今回は玄侑宗久氏に対談のお相手をお願いした。玄侑氏は、仏教僧であり、芥川賞を受賞した作家でもある。釈迦は、「出家するには仕事に就くな」と言っているが、そうなると玄侑氏が小説を書くのは、「邪道」ということにならないのか。そして、煩悩とは何か。聞きたいことがたくさんあった。 仏門に入った理由 田原:玄侑さんは、慶應大学のご出身でしたね。 玄侑:はい。 田原:慶應をお受けになった頃は、どんなふうに生きようとされていたんですか。もちろん、生家がお寺という事情はあったのでしょうが。 玄侑:暗中模索でした。第二外国語もフランス語を選んだのですが、他に中国語とアラビア語も学んで、結局中国文学科に進みました。 田原:玄侑さんは慶應を卒業されて、すぐに仏門に入るのではなく、いろいろな職業にお就