広島・長崎への原爆投下と太平洋戦争の終戦から76年。「原爆許すまじ」や「あの戦争を繰り返さない」などの反核・反戦意識は、どう定着してきたのだろうか。映画や漫画、小説などから戦後日本の思想や文化を分析してきた山本昭宏神戸市外大准教授(37)に、平和を巡る意識の変遷や行方について聞いた。【聞き手・鈴木英生】 「反省」加え外交の力に ――「唯一の被爆国」は日本のアイデンティティーの一部だ。 戦後初期はGHQ(連合国軍総司令部)の検閲で原爆被害を報じにくかったこともあり、日本人の反核意識が強まるのは1954年の第五福竜丸事件==以降のことだ。核兵器・核実験には否定的でも、原発など核の平和利用はおおむね肯定されてきた。 核への忌避感と肯定的意識をそれぞれ代表するのは、映画「ゴジラ」(54年)と漫画「鉄腕アトム」(雑誌連載は52~68年)だろう。ゴジラは水爆実験の影響で出現した怪獣で、アトムは小型原子