ひーちゃんとはーちゃんの話 1 ひーちゃんは中学生の頃に三人殺した 父、母、兄の三人だ 自殺しようと思って、自宅に火をつけた はた迷惑な野郎だ そしたらひーちゃんだけが助かってしまった やっちまった、とひーちゃんは思った いい人達だったのに燃やしちまった 2 家が無くなり、家族が全員死んで、 親戚の家で暮らすことになったひーちゃんは、 「いざとなったらもう一回自殺すればいいや」と思い、 そしたらけっこう生きるのが楽になった 火をつけたのがひーちゃんだとは誰も思わなかった 3 高校は遠い、勉強は難しい、親戚は優しい、 多忙な生活の中で、ひーちゃんはふつうの人間になっていった 「なんで自殺なんかしたんだろう?」と思うようになった 中学の頃の俺は、頭がおかしかったんだ 4 ひとごろしのひーちゃんは、 奨学金を使って大学へ進学し、一人暮らしを始めた 全ては順調に行っているように見えたが、 春の終わ