提供された脳を保存するための準備をする技術者。臓器サンプルは、新型コロナウイルス感染症、神経変性疾患、老化等が脳に与える影響を研究するために不可欠だ。(PHOTOGRAPH BY LUCA LOCATELLI FOR NATIONAL GEOGRAPHIC) 3日半も熱とせきで寝込んだエレナ・カッツァップさんは、新型コロナウイルス感染症から回復したものだと思っていた。米ロサンゼルスに住む作家で教師の彼女は、2022年1月末に感染したが、幸いにも軽症で済んだ。呼吸困難の症状や入院の必要はなく、数日で回復した。 「『元気になって本当によかった』と口にしたことを覚えています」とカッツァップさんは言う。「その翌日に突然、症状が出たのですが、始まりは吐き気や腹痛、奇妙な物忘れだったので、一体どういうことなのかわかりませんでした」 カッツァップさんはその日以来、集中力の欠如を伴う急性の記憶喪失を経験し