はじめに なぜ日本共産党史の研究は、歴史学・政治学などの学問的研究のなかで、これほどまでに評価されづらいのか。自民党史や社会党史に関しては相当な研究の蓄積があるのに、戦前の非合法時代はともかく、戦後に合法化され、国政政党となってからの共産党史の研究すら、今も忌避する人が多いのを常々実感している。 私は、左派の社会運動を研究対象としている大阪市在住の無党派の兼業主婦である(大変よく間違われるので重ねて書いておくが、私は女性である。高校生の息子いわく「BBA」だ)。しかし共産党にも新左翼諸党派にも、研究対象として以上の関心はない。そのような立場の私に『現代の理論』編集部から寄稿の依頼があったことに最初はとまどった。しかし、距離感があるからこそ書けることもあるだろうと思い、本誌5号に掲載された富田武氏の「戦後日本共産党史の見直しを」に、歴史学の立場から応答するかたちでお引き受けすることにした。