画廊で「処女性」を連呼した男 美術の世界で若い女性アーティストの制作活動を阻害する様々な要因を取材し、まとめた猪谷千香著『ギャラリーストーカー 美術業界を蝕む女性差別と性被害』(中央公論新社)が2023年1月に刊行された。 ギャラリーストーカーを「画廊で作家につきまとう人々」と説明する本書では、唖然とするような手口が数多く紹介されている。本書を読めば、ギャラリーストーカーとは、アーティストに対し、いわゆるストーカー行為を働く者だけでなく、立場の非対称性を利用してアーティストの人間性を踏みにじり、支配しようとする者のことであるとわかるだろう。 この本が刊行されるきっかけは、私もメンバーのひとりの「表現の現場調査団」が公表した調査だ。昨年は「表現の現場 ジェンダーバランス白書2022」を公開し、論座にも寄稿した。白書の公開を通じ、調査結果が各所で活用されることを望んでいたため、『ギャラリースト