空いてないかなと友だちが訊く。空いてると私はこたえる。空いてるけど、勉強会かあ。小説の読書会とか、美術館ツアーとか、ホームパーティとか、トレッキングとか、そんなだったら、行くんだけど。サヤカには向上心というものがない、と友だちが言い、どうもこの人は向上心がありすぎていけない、と私は思う。 友人の会社に川口さんという人がいる。川口さんは難しい問い合わせへの対処を担当している。社長を出せと要求していた人も、なぜだかずっと泣いていた人も、十数分ないし数十分ののちには、ある程度納得して電話を切る。その実績があんまり抜きん出ているので、社外の知りあいも呼んで川口さんをかこんで話をしようと、友人は考えた。私はそこに出かけることにした。暇だったのだ。 川口さんは四十代とおぼしき、華やかな格好をした女性だった。話す前に誰かが配った資料を見てふむふむとうなずいていた。なんだか川口さんが勉強する側みたいだ。私