人間は、自分が関与する問題を解決することこそ最も重要なことだととらえがちである。SI系の業務システムを請け負っている身からすれば、「どうやって早く構築し、人を操り、納期を守り、トラブルなく利潤を稼ぐか」という点に考えが集中してしまう。 「早く仕様を決めてください。これで大丈夫ですか? 決めないとお客さんの不利になりますよ」 「ここまではうちの責任範囲です。が、ここからは御社ですね。よろしくやってください。 筆者自身は学生時代からユーザー企業側として仕事をし、それが高じて企業向けシステム開発を中心としたIT系の業界に転身した身なのだが、転職後こうした言葉をさまざまな人が口にするのを聞いたときには正直耳を疑った。業務アプリケーションの構築に限らない話だが、作る内容はおろか、使い方を想定しない「現場の理屈」がまかり通り、現場には押し付けに近い形で業務が降ってくる。そんな状況で構築されたものが、果