巻頭の口画に掲げたるは現今上流社会台所の模範と称せらるる牛込(うしごめ)早稲田大隈伯爵家の台所にして山本松谷(やまもとしょうこく)氏が健腕を以て詳密に実写せし真景なり。台所は昨年の新築に成り、主人公の伯爵が和洋の料理に適用せしめんと最も苦心せられし新考案の設備にてその広さ二十五坪、半(なかば)は板敷(いたじき)半はセメントの土間にして天井におよそ四坪の硝子明取(がらすあかりと)りあり。極めて清潔なると器具配置の整頓(せいとん)せると立働(たちはたら)きの便利なると鼠(ねずみ)の竄入(ざんにゅう)せざると全体の衛生的なるとはこの台所の特長なり。口画を披(ひら)く者は土間の中央に一大ストーブの据(すえ)られたるを見ん。これ英国より取寄せられたる瓦斯(がす)ストーブにて高さ四尺長さ五尺幅弐尺あり、この価(あたえ)弐百五十円なりという。ストーブの傍(かたわら)に大小の大釜両個(ふたつ)あり。釜の此
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