「原爆を憎んで、なぜかそれを落としたアメリカを憎まず」……考えても見ればおかしなものだ、しかし、それが戦後平和主義の教えだった。結果的に、この教えを普及させた一端は多分『はだしのゲン』だろう。 だが、この漫画を文部省PTA日教組御用達にした奴らなんかどうでもいい。この漫画で、終盤大人になるにつれ思想がはっきりしてくる以前の、子供のゲンにとって、無人格の「ピカ」以外で最大の悪役は誰だったか? それは東條英機でもなければマッカーサーでもない。それを今一度考えることは、無駄ではないかも知れない。 『はだしのゲン』は長らく、小学校の学級文庫で唯一読める漫画だった。全身焼けただれた被爆者たち、戦中は非国民と罵られ戦後は被爆で抜けた頭髪を馬鹿にされ変わらず繰り返される陰湿なイジメ、食い物を手に入れようと見苦しくもがく少年たち、加えてあのアクの強い絵柄……率直に言って、読んで楽しい漫画じゃなかった。でも