安全保障関連法案の国会審議で与党まで驚かせたのは「自衛隊は捕虜の扱いを受けられない」との岸田文雄外相の答弁だった。 問題の答弁があったのは七月一日の衆院平和安全法制特別委員会。野党議員から自衛隊が物資輸送など他国軍への後方支援中に拘束された場合、「捕虜」になるのかと質問された岸田外相は「ジュネーブ諸条約上の捕虜とは、紛争当事国の軍隊の構成員等で敵の権力内に陥ったものとされる。自衛隊の後方支援は武力行使に当たらない範囲で行われるので想定されない」と答弁、珍しく与党席までざわついた。 後方支援中の自衛隊は捕虜の人道的待遇を義務付けたジュネーブ条約の「捕虜」にならず、拘束した国の法律で裁かれる可能性があることになる。政府の命令通りに従って「有罪」ではたまったものではない。「拘束を認めず、ただちに解放を求める」(岸田外相)というが、思惑通りにいくかどうか。