【ある役人と水俣病・公害認定50年】(1)原因究明に奔走した保健所長 「1年で片が付いたはず」 2018/9/23 6:00 元熊本県衛生部長、伊藤蓮雄(はすお)(91年没、享年80)が自宅に残していた資料だ。56年の水俣病公式確認当時、伊藤は現地水俣の保健所長だった。医師でもある。 資料を収めたファイルには、水俣病患者の公的扶助状況や障害の分類といった書類も含まれていた。長男隆一郎(74)は今夏、改めて資料を開いた。 公害認定で政府は原因を「チッソ水俣工場の排水」と断定する。資料からは、政府の発表を長年待ち望み、協力した伊藤の姿が浮かび上がる。 76年に県庁を退職するまで水俣病に深く関わった。未知の病に襲われた患者たちへの対応に奔走しながら、ごく初期にその原因にもたどり着いていた。 隆一郎は、伊藤が繰り返した言葉を覚えている。 「水俣病は、1年で片が付いたはずの問題だった」 ∞∞ 56年