タグ

ブックマーク / note.kishidanami.com (23)

  • どこかにはいるけど、ここにはいない弟|岸田奈美|NamiKishida

    その時、わたしは、ケーキを選んでいた。 爆裂においしいケーキのために、わざわざ隣の市まで車を走らせ、行列に並んだのである。 「なー、なー!どれにする?」 一緒に来たはずの母を振り返ると、なにやら電話をしていた。 「良太が……」 電話を切った母が、わが弟の名前を出す。 「いなくなったって……」 ケ、ケーキを目前に、よりにもよって今、そんな面倒くさそうな事件が。モンブランに後ろ髪を引かれながら、うわの空で状況を聞いた。 弟は月に二度、移動支援ガイドヘルプというサービスを受けている。ヘルパーさんに付き添ってもらい、映画やカラオケなど、好きな場所へ行けるのだ。 今日は、神戸の中心街・三宮に行っていた。地下街の人混みのなかで、ヘルパーさんが弟を見失って、うっかりはぐれてしまったそうだ。 迷子。 いや、28歳ともなれば、もはや子ではない。 迷男。 「まだ見つからへんねんて」 青ざめる母。 「電話や、電

    どこかにはいるけど、ここにはいない弟|岸田奈美|NamiKishida
  • 【期間限定】マガジン全話無料クーポン配布中&人気記事14選|岸田奈美|NamiKishida

    岸田奈美の原作ドラマ『家族だから愛したんじゃなくて、愛したのが家族だった』の完結を記念して、 生きるために書き抜いた、恥も涙も! 300記事以上を! 今だけ無料で読めます! クーポンコードは「kinari」です! 岸田家はこのマガジンの売上だけで一家4人が生活してるので、ぶっちゃけ「大丈夫なんかな」と思ってます。 心配で、朝も起きられません。 一日三しか、喉を通りません。 ですが、ドラマからここまでたどり着いてくれた人や、のっぴきならない事情で購読ができなかった人にも、楽しんでもらえるのは今だと。 こんな祭りができるのは、今までキナリ★マガジンにお金払ってくれ、わたしを支えてくださった、アツくて遠い親戚のような皆さまのおかげです。 皆さまのおかげで、魂の削り節をですね、おすそわけできます。 ありがとうございます! 1.無料でマガジンを読む条件ちょっとこう、不便なとこあるなあと思うんですが

    【期間限定】マガジン全話無料クーポン配布中&人気記事14選|岸田奈美|NamiKishida
    tuffgong
    tuffgong 2023/08/05
    クーポンコードの入力欄を見落として、8月分課金されてしまった。欲をかいてはいけないのだな
  • 国道沿いで、だいじょうぶ100回|岸田奈美|NamiKishida

    子どものころ、大人気のお歌があった。 「奈美ちゃん、奈美ちゃん、どっこですか〜♪」 先生が歌えば、 「ここでっす、ここでっす、ここにいます〜っ♪」 子どもらは大喜びで、返事をする。 母が歌う。 「良太くん、良太くん、どっこですか〜♪」 弟はいつもどこかにいたけど、それは絶対に、ここではなかった。 ジッとしてられない弟だった。 だまってられない弟だった。 保育園でも、小学校でも、歩道でも、公園でも、どこでも無尽蔵に跳ねまわっていた。軌道がまったく読めないので、スーパーボールみたいだ。 捕まえられるのは、母だけ。 母が弟を取り押さえるときの爆発的な初速は、ご近所の間で「神戸市北区のフローレンス・グリフィス・ジョイナー」と褒め称えられていた。 小学校へ入学すると、弟はさらに速く、そして給によって重くなり、体当たりでしか止められなくなった。 母はまもなく「神戸市北区のリーチマイケル」の称号も得た

    国道沿いで、だいじょうぶ100回|岸田奈美|NamiKishida
    tuffgong
    tuffgong 2023/06/09
    何があった?
  • 100年後に“不幸”なわたしへ (コテンラジオ〜障害者の歴史〜)|岸田奈美|NamiKishida

    「うちの子は、良太くんみたいにはなれへんと思うから……」 先週はるばる山を越えてサイン会に来てくれた友人が、ポロッとこぼした一言が突き刺さった。 良太とはわたしの弟だ。ダウン症で知的障害がある。友人の3歳になる娘さんも同じだった。 「良太が3歳やったときより、ずっとお利口さんに見えるで」 それでも、友人の顔は曇ったままだ。 「この子な、人にあんまり興味がないねん。おしゃべりもほとんどない。わたしにとってはカワイイけど、わたしがおらんところで、誰からも愛してもらわれへんかったらどないしようって想像すると、怖くなる……」 困らせてごめんと泣きそうに謝る友人を見て、わたしはうまい返事がとうとう見当たらなかった。 彼女に手を引かれる娘さんは、じっと窓の外を走る電車を見つめる瞳は、あんなにも愛しかったのに。 弟との日々を書くことは楽しく、読んでくれる人がいるのは嬉しい。いつか弟がひとりで生きていくか

    100年後に“不幸”なわたしへ (コテンラジオ〜障害者の歴史〜)|岸田奈美|NamiKishida
    tuffgong
    tuffgong 2023/02/25
    愛は裏切るけれど親切は裏切らない。世間はかなり親切ですよ
  • 家を出るダウン症の弟にはなむけをしたら、えらいことになった(総集編)|岸田奈美|NamiKishida

    キナリ★マガジンで5ヶ月間、10万文字にわたって連載してきた「姉のはなむけ日記」を、9000文字にギュッとして書いた総集編です。全文、無料で読めます。 ゾッとした。 この二年間で、ばあちゃんは認知症になって施設で暮らしはじめ、車いすに乗っている母は心内膜炎で死にかけ、わたしは会社をやめて作家業についた。 ダウン症で4歳下の弟だけは、実家で暮らし、福祉作業所へ通って手仕事をし、マイペースを貫いていた。 ふと立ち止まって、ゾッとしたのは。 この先、わたしや母の身になにかあれば、弟がひとりぼっちになるということ。 わたしですら、ばあちゃんの介護がはじまったとき、役所で福祉の手続きをしたらあまりに面倒でややこしく、泡吹いて倒れそうになったのだ。 障害があってうまく話せない弟は、ちゃんと頼れるんだろうか。 いざというときに頼れる先は、多いほうがいい。弟は26歳。いい人間関係ををつくるには時間がいるの

    家を出るダウン症の弟にはなむけをしたら、えらいことになった(総集編)|岸田奈美|NamiKishida
    tuffgong
    tuffgong 2022/09/11
    書籍化を希望していたが、こうきたか岸田
  • 夕暮れの大脱走(姉のはなむけ日記/第15話)|岸田奈美|NamiKishida

    三週目のグループホーム体験入居が、はじまる。 週末、いったん実家へ帰ってきた弟が、ふらつきながら部屋を出てきた。足がもつれている。とはいえ、どう見てもわざとなので、もつれるというか、小粋なステップを踏んでいる。 「ちょっと、なんかぼく、しんどいねん」 「しんどいん?」 「ねつあるねん」 「マジか。体温計はかったるわ!」 「いいねん、いいねん」 弟は、小粋なステップでわたしの横をすり抜けていく。テレビ台の小さな引き出しから、薬の箱を取り出した。 「くすり、のむねん」 箱に入った錠剤をぽろぽろと手のひらで受けて、お茶と一緒に飲み込む。すこし間があって、弟がハアーッと重いため息をつく。 「しんどいねん、ねつが。やすみます」 そうか。しんどいのか。 その薬はビオフェルミン(整腸剤)やけどな。脇に体温計を挟んでみたが、平熱だった。 一連の行動が、母には覚えがあった。 何年か前、福祉作業所にちょうど通

    夕暮れの大脱走(姉のはなむけ日記/第15話)|岸田奈美|NamiKishida
    tuffgong
    tuffgong 2022/07/17
    家族が一つの目標に向かってそれぞれに不安を抱え、周囲の支えも得ながら、乗り越えようとしている。こうなってくると早かったのかなとも感じるけど今だったのだろうなあ。現在進行系のところ不謹慎だが書籍化希望
  • ギンギラギンの26歳男児(姉のはなむけ日記/第14話)|岸田奈美|NamiKishida

    体験入居中のグループホームへ、もう行かないと宣言する弟。いままでの苦労が水のバブルになるやも。 あせってはいけない。 「なんで行きたくないん?」 「もう、あかん、っていわれます」 「あかんって、なにがや」 「スマホで、でんわしたら、あかんって、いわれます」 実際は「あっ、いやあ、スマホが」「でんわ、あかんって」「いわれる、あかん」「だめ、スマホ」とか、もそもそ説明していた。 弟は、昨年に母が入院をしたのをきっかけに、スマホを持ってる。グループホームに体験入居してる他の人たちは持ってないかもしれないし、みんなの前でスマホを使うのは、あかんのかしら。 そんなこと、中谷のとっつぁん、言ってたっけな。 いや、違うやん。 弟、深夜2時くらいに、わたしに電話かけてきとるわ。寝られへんから不安とかじゃなく、夜9時に居眠りしてもうたがゆえにパッと目覚めた弟による、暇つぶしの電話。 「それは……夜中にスマホ

    ギンギラギンの26歳男児(姉のはなむけ日記/第14話)|岸田奈美|NamiKishida
    tuffgong
    tuffgong 2022/07/15
    先が気になるが……
  • ボケ続ける世界で生きてゆく(姉のはなむけ日記/第10話)|岸田奈美|NamiKishida

    課題がポンポコと出てくる新しいグループホームに、弟を送り出してよいものか。 どんだけ悩んだって、朝はやってくるのである。 別府の朝だ。 ところで、別府の夜に巻き戻すと、こんな感じだった。 日中のキッズたちを別府へと駆り立てる!夢の楽園! 杉乃井ホテルだ! その設備のワンダーランド具合からそこそこお値段が張るのであるが、キナリ★マガジンの購読料をブッ込ませてもらった。やっててよかったキナリ★マガジン。腹が減っては車は買えぬ。 このブッフェの目玉は、カニべ放題。あまりの出血大サービスに、カニだって勘弁してくれと願ってる。 800席近い巨大なブッフェ会場には、どこもかしこも、家族たちが目を血走らせてカニをべている。カニ以外のものを腹に入れてなるものかという己に課した制約すら見える。言っちゃ悪いけど、あんたらは当にそこまでしてカニがべたいのか。 「お事中、すみませ〜ん!ちょっとお写真、

    ボケ続ける世界で生きてゆく(姉のはなむけ日記/第10話)|岸田奈美|NamiKishida
    tuffgong
    tuffgong 2022/06/08
    職場で読んで涙腺がダメになった。“言葉じゃないもので、世界を見ようとしていた”全くそのとおりだ。皆さんからすると光の速度くらいで周囲が動いていて、全くついていけない世界に居場所を作らないといけない。
  • ぐちゃぐちゃのお子様ランチ(姉のはなむけ日記/第9話)|岸田奈美|NamiKishida

    近隣住民の人に、管理責任者である中谷のとっつぁんが早速、話を聞きに行ってくれた。 「車、いつ乗れるんかなあ」 そんな緊迫した状況はつゆ知らず、弟は別府の温泉でホクホクになっていたのだった。 ポペンッ。 スマホの通知が鳴る。中谷のとっつぁんからだった。障害者は気持ち悪い、という言葉が蘇ってボディーブローをくらったような心地になったわたしは、スマホを触るまで一度えずいた。グエェ。 「事情を聞いてきて、まあ、ひとまず、反対されている理由がわかりました」 中谷のとっつぁんが教えてくれたことには。 なんと、障害のある人が、先にあちらのご自宅を訪れていたというのだ。 わたしはてっきり、会ったこともない入居者たちに「気持ち悪い」とイチャモンをつけているんだと思っていたので、びっくりした。 グループホームは、入居を希望する人のために、見学の時間を設けている。 弟が中谷さんと初めて会う、少し前。 その日も、

    ぐちゃぐちゃのお子様ランチ(姉のはなむけ日記/第9話)|岸田奈美|NamiKishida
    tuffgong
    tuffgong 2022/05/31
    単行本になったら買ってしまうな
  • きみが家族じゃなかったらよかった(姉のはなむけ日記/第8話)|岸田奈美|NamiKishida

    送迎車のためならエンヤコラと大分県別府市の車屋さんまで行ったら、なんと、ほぼ新車のセレナと出会えたのだった! 車屋の馬〆さんから、くわしい仕様や納期の説明を受けていると。 電話が鳴った。 グループホームの責任者、中谷のとっつぁんからだ。ちょうどよかった。セレナを入手できたって言おう。喜ぶぞォ。 「もしもし、お姉さんですか」 「はーい!ちょっと聞いてくださいよ、中谷さん。ありましたよ!車!セレナ!ほぼ新車!7人乗り!」 「えっ、はっ……ええ……!?」 興奮のあまりたたみかけてしまった。しかし、中谷のとっつぁんの反応が予想と違う。ここは「ええっ!?」ではないのか。 いやな予感がした。 「あの、それはもう、当に、ありがとうございます……そんないい車を……」 「どうしました?」 「ええ、あのですね、お姉さんのお耳に入れておきたいことが」 基的にわたしのお耳には普段、右から左に抜けていくザルの役

    きみが家族じゃなかったらよかった(姉のはなむけ日記/第8話)|岸田奈美|NamiKishida
  • グッバイ、祖母の運命の家はウチじゃない(前編)|岸田奈美|NamiKishida

    80歳になるばあちゃんが、施設へ行く日がついにやってきた。 施設というと、なんか薄暗いイメージを持たれるかもしれない。「認知症対応型共同生活介護(グループホーム)」という、立派な名前がついている場所だ。 最初、様子がおかしいことに気づいたのは、母だった。 5年前のことである。 わたしは東京に住み、母と弟とばあちゃんは神戸に住んでいた。 母は大阪にある会社まで、片道一時間半ほど車を運転して帰っていた。夜7時をすぎて仕事が終わると、いつも祖母に電話をする。 「お母さん、なんかべるもんある?」 忙しかった母は、昼ごはんをべそこねることも多かった。お腹はペコペコだ。 すると、祖母は答える。 「夕飯作ったし、冷蔵庫にもなんなと(なんでも)あるで」 その言葉を信じ、母は一目散に家へ帰る。 すると、21時前にしてすでに床へ入っていた祖母が、沼の妖怪のようにズル…ズル…と這い出てきて、面倒くさそうに母

    グッバイ、祖母の運命の家はウチじゃない(前編)|岸田奈美|NamiKishida
    tuffgong
    tuffgong 2022/02/19
    火サステーマは、ジャジャジャン、ジャジャン、ジャージャーン じゃなかったか
  • サイン会でバーサーカーになったから、病んだらしい(どすこいしんどみ日記)|岸田奈美|NamiKishida

    ※メンタルが弱っている現在のことです。そんなにどぎつい書き方はしてないと思うんですが、つられてしんどくなってしまう人はご注意ください。 ※医師や専門家のお話を交えつつ書いていますが、いち個人の、しかも特殊な職業のわたしの話であることをご了承ください。 前回のnoteに引き続き、わたしの心が疲労骨折した話なのだが。 そもそも、なんで疲労骨折したねん。 好きなことを仕事にして、寝不足の翌日は泥のように寝て、夜型だから朝はなんも予定を入れないようにして、家族の心配ごともひとつずつ解決して。 わたしにしては、順調オーライだったはずなのでは。 だって一年前は、母、死にかけてましたし。じいちゃん、死にましたし。あれに比べると、まあ、全然。 完全に昼夜逆転してしまったから? 誤解で保健所に通報されたから? 深夜の打ち合わせがあったから? 二週間くらい集中が必要な仕事を受けたから? 取材やテレビ出演などの

    サイン会でバーサーカーになったから、病んだらしい(どすこいしんどみ日記)|岸田奈美|NamiKishida
    tuffgong
    tuffgong 2022/01/15
    人間は人間が怖く、それを自覚する必要。
  • 走れ!ボルボ!この腕がもげようとも!|岸田奈美|NamiKishida

    ごきげんよう、岸田奈美です。 全財産を使ってボルボを買い、手だけで運転できるように改造してから、一年が経ちました。 これね。 2022年1月13日(木)、これを書いているあと数秒後に「奇跡体験!アンビリバボー」で、特集されてます。すごい。 もう一年よ。早い。 あれが、クライマックスだと思ってたんだけどな。 まさか納車してすぐ母が緊急手術で死にかけたり、じいちゃんが大往生RTAになったり、ばあちゃんが遺産の1,500万円使い込んでたことがわかった瞬間盛大にボケたり、まあ…色々…当に…色々…あって……。 あまりに色々ありすぎたんで、占い師?霊能師?みたいな人にちょっと一発派手に鑑定してもらったら 「祟りとか呪いとかじゃなく、シンプルにあんたの背後で豪運の神と、不運の神が居場所を争い続けてるっぽい」 って言われて。 わたしの背後、シンプルに太古の戦場だった。 神々が大乱闘スマッシュブラザーズし

    走れ!ボルボ!この腕がもげようとも!|岸田奈美|NamiKishida
    tuffgong
    tuffgong 2022/01/13
    あんた本当に休めているのか?背後霊とか見えんけどまずは俺の前に座れや。とりあえず聞くぞ
  • 睦月の岸田奈美〜大改造!私的ビフォーアフター〜|岸田奈美|NamiKishida

    はじめにじいちゃんの喪中ゆえに、新年の挨拶を遠慮させていただきますが、こういうときは、なんて言えばいいのでしょう。 「ボクの国に喪中なんて文化ないヨォ!パーティーも、そんな気になれないって人だけ辞退したらいいジャン!日の人々、ホントにアホまじめネェ〜」 喪中なもんで、恒例の西宮えびす神社への初詣もできず、せめて地元の海に祈っとくか〜とポセイドン信仰かまして入った海上レストランで、鉄板焼シェフをしていたトルコ人に言われた。言いすぎ。 イェニ・ユルヌズ・クトゥル・オルスン!(トルコ語であけましておめでとう) 今年もみなさんに、おもろいことがありますように。 おかげさまで、いろんなお仕事や約束を延期させてもらえたので、ぐんぐん休んで、どんどん元気になりつつあります。 そのへんのメンタルのことは「どすこいしんどみ日記」とタイトルにつけて、だらだらと書いていきます。 年始はいつもミステリー小説を読

    睦月の岸田奈美〜大改造!私的ビフォーアフター〜|岸田奈美|NamiKishida
    tuffgong
    tuffgong 2022/01/03
    有料で書いている責任のようなものもうっちゃってどっぷり休みなさいって
  • 岸田奈美が2021年に出会ってよすぎたものを1万字で説明する|岸田奈美|NamiKishida

    2021年にわたしが買ったり、読んだり、観たりしてご満悦したものを1万文字で紹介します。書きすぎ。 ただね、こう、人間が言う「好きなもの」ってのはあまり信用ならんわけですよ。なぜなら、われわれは純粋ではないので。好きなものだけを遊び散らかしていた三歳児の頃とはもう違う。大人になりました。大人になりすぎたのかもしれません。 それを好きだということで、社会的にどう見られるか、どんな地位を築けるか、という打算がとんでもない速さで、できるようになってしまった。ちくしょう。誰かわたしの頭をこん棒のようなもので殴って三歳児に戻してくれ。 しかし。たとえ無意識にイキりまくっているとしても。わたしは、出会ってよかったものを、「良すぎんか??????」と叫びたいのだ。 ということで、よろしくお付き合いください。 リンクから買おうがわたしには1円も入りませんし、PR費用も一切頂いておりませんので、安心してどう

    岸田奈美が2021年に出会ってよすぎたものを1万字で説明する|岸田奈美|NamiKishida
    tuffgong
    tuffgong 2021/12/29
    早く休みなさい
  • 深夜、電話にスキマスイッチが出た|岸田奈美|NamiKishida

    10月の終わりのことだ。 「もしもし」 電話に出たら、スキマスイッチに繋がった。 令和のおとぎ話である。 将来、孫に言ってもたぶん信じてもらえない。実際のところ家族には信じてもらえなかった。 夜中に、スマホの着信音が鳴った。 画面を見る。 Oさんだった。 凄まじい審美眼を持ち、漫画や映像作品のプロデュースをしている人だ。 「Vガンダムは全然ヴィクトリーしてないのではないか」などの話で盛り上がったことは何度もあるが、ともに仕事をしたことはない。 「Oさん、どうしたんですか」 「スキマスイッチって知ってるよね?」 「もちろんです」 1991年生まれのわたしの青春は、スキマスイッチとともにあり続けている。 「そのスキマスイッチのコンサートの演出をすることになったんだけど」 「へえ!スキマスイッチって実在したんですね」 なにかにつけ、人生のそばにいつもいるので概念のようになっている。 「いま、彼ら

    深夜、電話にスキマスイッチが出た|岸田奈美|NamiKishida
    tuffgong
    tuffgong 2021/12/13
    何がどう巡り会うか分からないのが人生。ボクノートが好きなりょうたさんは元気かな
  • 弟が大金を稼いだので、なにに使うかと思ったら|岸田奈美|NamiKishida

    岸田家の歴史を揺るがす大事件が起きた。 わが弟が、莫大なお金を稼いだのである。 大金とは、彼が三十年働いて手にするはずの金額だ。 それを数時間で。 田舎の片隅にある剥がれたフローリングの我が家から、絶世の富豪が爆誕した。血統書のない梅吉(犬)も、高貴なチャウチャウに見えてくる。 弟は生まれつきダウン症なので、障害のある人が集まる福祉作業所で、平日の朝から夕方まで働いており、日給は500円だけど昼が450円なので、手取りは50円だということは、一旦、横に置いておく。 富豪が爆誕したのだ。 (※賃金は弟の障害の程度、作業所が受注できる業務の量、通っている人数などの兼ね合いがあり、弟も働くというよりは、みんなで喋ったり、散歩したりすることをなによりの目的にして通ってるので、ゆるく受け入れてくださる福祉作業所のみなさまにとても感謝しています) さて、その気になる稼ぎ方であるが。 手書きカレンダー

    弟が大金を稼いだので、なにに使うかと思ったら|岸田奈美|NamiKishida
    tuffgong
    tuffgong 2021/10/19
    こんなアホな姉で大変じゃの。知らんけど
  • いなくなった、あの人のこと|岸田奈美|NamiKishida

    今年の3月ごろ、足を運ぶのにダントツで気が重い場所は、役所だった。 母が感染性心内膜炎というやばい病気で入院。 祖母の物忘れが急加速し、介護認定。 ダウン症の弟と祖母が一緒になるとトム&ジェリーからユーモアを抜いたような様相になることが増えたので、弟のグループホーム入居。 十年も精神病院で過ごしていた祖父が亡くなったので、相続。 わたしが東京から神戸へ出戻ることになったので、引っ越し。 一気に押し寄せてきたので、事あるごとにわたしは役所に行っていた。クエストを進行しに行ったはずが、なぜかいつもクエストを受注して帰ってきたような気がする。 書類を作るための書類に押す印鑑を証明するための書類を作るから、家に郵送する書類と他の書類を集めてもう一度来てね、みたいな。ドラクエの石板集めの方がまだ簡単。 でも、手続きが面倒というだけで、気が重かったわけじゃない。 手続きって、お金をもらうことでもあるか

    いなくなった、あの人のこと|岸田奈美|NamiKishida
  • スポーツ音痴のわたしが、パラリンピックでアレするまで(後編)|岸田奈美|NamiKishida

    9月5日、パラリンピックの最終日であり、わたしの出演の最終日。 あれよあれよと怒涛で勝ち進み、決勝を迎えた男子車いすバスケットボールの試合は素晴らしかった。 相手はあのアメリカだ。バスケといえばアメリカだなんて、スポーツ音痴のわたしでもよくわかる。あちらさんの選手が入場したときから、もう、ガタイの良さが中継カメラ越しに圧倒してくる。 そのアメリカ相手に、金メダルへ手をかけながら互角に戦った。2012年のロンドン大会も、2016年のリオ大会も、9位で予選落ちをした日のチームが。ここまで勝ち進んだだけでも、スーパーウルトラジャイアント・キリング。 解説の根木慎志さんが、どんだけ尺がカツカツになろうとも 「ベリーハードワーク!彼らが目指したのはベリーハードワークですから!ベリーハードワークで強くなったんです!」 と拳を握りながら繰り返していた。 ベリーハードワークが情緒のすべてをねじ伏せている

    スポーツ音痴のわたしが、パラリンピックでアレするまで(後編)|岸田奈美|NamiKishida
  • ビジネスホテルの旦那は、旦那より旦那|岸田奈美|NamiKishida

    最初に言っておくが、下世話である。 これは下世の話である。 大切な仕事があるので、三泊四日で東京のビジネスホテルに泊まった。 最終日のテレビ朝日の配信出演にあわせ、場所は六木を選んだ。 21時30分くらいにホテルに着き、慣れないアレやらコレやらで、へっとへとのへとになった体をシングルベッドに沈ませたところだった。 「あんっ……!」 あまりの体の重さにベッドフレームが喘いだかと思ったが、喘いだのは確かに女性だ。 ぴと、と左右の壁に耳をつける。なにも聞こえない。 ドアに耳をつける。 ここだけどうにも、耳に伝わる音の感じが違う。 「あっ、あんっ」 聞こえた。 向かい側の部屋だ。 ゼルダの伝説ならばここに爆弾を置くと隠された道が開くのだが、悲しいかな伝説ではなくこれは実話。ゼルダの実話。 TUBEの歌はどこで聞いても最高の夏だが、喘ぎ声はいつどこで誰と聞くかによって最高にも最低にもなる。 これが

    ビジネスホテルの旦那は、旦那より旦那|岸田奈美|NamiKishida
    tuffgong
    tuffgong 2021/07/27
    “フロントのお姉さんが深々と頭を下げた”鼻水が吹き出た