山本七平の『日本人と中国人』の文庫化に解説を書いてほしいと頼まれて書いたのだが、この本の著者はイザヤ・ベンダサンという架空の人物であることになっており、著作権継承者が「イザヤ・ベンダサンは山本七平の筆名」だということを認めていないので、誰が書いたのか曖昧にしたまま解説を書いてくれと原稿を送ったあとに言われたので、「そんな器用なことはできません」と言って没にしてもらった。 せっかく書いたので、ここに掲載して諸賢のご高評を請う。 「日本人と中国人」はかつて洛陽の紙価を高めた山本七平の『日本人とユダヤ人』を踏まえたタイトルであり、その造りも似ている。いずれも「日本人論」であって、タイトルから想像されるような比較文化論ではない。中国人もユダヤ人も、日本人の特性を際立たせるために採り上げられているだけで、主題的には論じられているわけではない(『日本人とユダヤ人』では、著者イザヤ・ベンダサンが「米国籍