栄養疫学者の視点から 栄養に関する研究の質は玉石混交。情報の渦に巻き込まれないために,栄養疫学を専門とする著者が「食と健康の関係」を考察します。 [第16話]食に関する報道のゆがみ 今村 文昭(英国ケンブリッジ大学 MRC(Medical Research Council)疫学ユニット) (前回よりつづく) 栄養疫学に限らず,正確さを損なわずに誰にでも理解しやすい情報を発信することは難しいものです。さらに情報過多のこの時代,受け取る側も溢れる情報のかけらを消化しながら,ますます混沌としています。 前回(3275号)紹介した玄米と白米とを比較した研究(J Nutr. 2011[PMID:21795429])について,ハーバード大学からも広報記事が出ています(註1)。白米の群でLDLコレステロールが下がった他,糖尿病患者に限った解析でのみ玄米の群では拡張期血圧が下がり,HDLコレステロール