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reviewに関するurza358のブックマーク (21)

  • 『ユニコーンオーバーロード』やめ時の見つからないSRPGの傑作|冬木糸一

    https://amzn.to/3vhDqvn ゲーム『ユニコーンオーバーロード』、とりあえず一回クリア。おもしろかったー。『十三機兵防衛圏』のヴァニラウェアの新作。とはいえディレクターが異なる(十三は会社代表でもある神谷盛治、ユニコーンは野間崇史。)のでそこまで期待していたわけではなかったが、ちゃんとおもしろい。 このゲーム、『十三機兵防衛圏』と2ラインで動いていた企画だから十年ちかくかかっているんだね。だいたい構想うん十年とかいう企画は微妙なことが多いのだけど今作の場合はシンプルに時間がかかる作りで、時間が質に転化されている感じ。SRPGにしては多いキャラクター数(60体以上)、各キャラクター同士のかけあいは豊富で、しかも各キャラにはみんなボイスがあって──と、とても贅沢な作品だ。デザインも素晴らしいキャラクタが多い。 基的にストーリーは超王道で、国を追われた元王子の少年が成長し、仲

    『ユニコーンオーバーロード』やめ時の見つからないSRPGの傑作|冬木糸一
  • 世界を決定的に変えてしまう技術や出来事が描かれるSF短篇が集まったアンソロジー──『フォワード 未来を視る6つのSF』 - 基本読書

    フォワード 未来を視る6つのSF (ハヤカワ文庫SF) 作者:ブレイク クラウチ,ベロニカ ロス,N K ジェミシン,エイモア トールズ,ポール トレンブレイ,アンディ ウィアー早川書房Amazonこの『フォワード 未来を視る6つのSF』は、アンディ・ウィアー、N・K・ジェミシンなど今欧米圏で話題の作家ら6人が短篇を寄せたアンソロジーになる。 編者は自身も作に短篇を寄せているブレイク・クラウチで、テーマとしては急速な変化と技術の進歩、その中で育つことの意味について。また数々の変化が世界をどのように変えてしまうのか。変えるべきなのか、変化を防ぐべきなのかといった「未来」について──といったあたりで、けっこうざっくりとしている。 とはいえ、上記の3人にベロニカ・ロス、エイモア・トールズ、ポール・トレンブレイを加えたベテラン&人気作家の計6人が、人間以上の存在となったAI、遺伝子改変、量子コン

    世界を決定的に変えてしまう技術や出来事が描かれるSF短篇が集まったアンソロジー──『フォワード 未来を視る6つのSF』 - 基本読書
  • THE RED PILL 赤い丸薬|麦ご飯

    THE RED PILLというドキュメンタリー映画をご存じだろうか。Cassie Jaye(キャシー・ジェイ)というフェミニストが、男性がおかれている現状にMRA(men's right activists 男性権利活動家)へのインタビューを通して探っていくという映画だ。 弱者男性や反フェミニストの話に明るい方はご存じかもしれない。しかし、その映画の内容まで知っている方は少ないと思う。twitterの反応では気になっている方もいるようなので、稚拙ではあるがこのような形で述べさせていただきたいと思う。 出来るだけ映画の内容について細かく語っていきたい。なにぶん英語はあまり得意ではなく、間違っているものがあればコメントで教えていただけるとありがたい。 キャシー・ジェイという人物この映画を撮ったキャシー・ジェイから述べていきたい。彼女はおとなしい子供だったようで、心配した母親が演劇を始めさせた。

    THE RED PILL 赤い丸薬|麦ご飯
  • macOSのM1とx86-64におけるベンチマーク比較の考察

    世間ではAppleの新しい製品に使われるARM64 CPUであるM1の話題でもちきりだ。ただし、日語を話す記者というのは極めて非科学的かつ無能であり、M1の現物を手にしても、末端のソフトウェアを動かして、体感で早いだの遅いだのと語るだけだ。そういう感想は居酒屋で酒を片手に漏らすべきであって、報道と呼ぶべきシロモノではない。 と思っていたら、Phoronixがやってくれた。M1とi7で動くmacOSでベンチマークをしている。 これを考察すると、M1のMac Miniは、一世代前のi7のMac Miniに比べて、メモリ性能とI/O性能が高く、演算性能は低いようだ。このことを考えると、M1の性能特性としては、動画のエンコードやソフトウェアレイトレーシングをするには不向きだが、その他の作業は遜色ないだろう。 問題は、仮想化とRosettaを組み合わせることができないという点だ。x86-64のユー

  • 『エル・トポ 製作40周年デジタルリマスター版』公開決定!

    エル・トポ 製作40周年デジタルリマスター版 2010年9月25日(土)より、 ヒューマントラストシネマ渋谷にて公開(全国順次) 1970年真冬のニューヨーク。 真夜中から始まった伝説 70年代、次々とこの世に産み落とされたカルト・ムービー。その頂点に君臨し<最高の完成度そして最もクレイジー>と称される伝説的作品が、「エル・トポ」である。なんの宣伝もされないまま、真夜中に上映された作は、瞬く間に当時のニューヨークを熱狂の渦に巻き込み、歴史的ロングランを記録。アンディ・ウォーホール、ミック・ジャガー、デニス・ホッパーといった当時の最先端を行くアーティストたちを魅了し、自ら4度も劇場に足を運ぶ程作に惚れ込んだジョン・レノンは、その配給権を買い取るまでに至る。寺山修司の絶賛を受け、作が日初公開されたのは1972年のメキシコ映画祭。その後15年の歳月を経て1987年、ついに一般公開。日

  • わたしが知らないスゴ本は、きっとあなたが読んでいる: いきなりコンサルタントに抜擢されたSEが読むべき5冊

    上長から「来週からコンサルタントとして○○社に入ってくれ」なんて言われたときに、あわてないための5冊。以下の条件全部にあてはまる人のための選書なので、関係ない方はスルーしてくだされ。シリーズ化しつつあるエントリ( [その1]、[その2] )だが、ここらでまとめ。 システム開発チームのメンバーまたはリーダー 顧客の御用聞きを「コンサルティング」だと思っている ←これ誤り McKinsey や accenture といった「ファーム」と一緒に、顧客の中に入って仕事しなければならなくなった これまで、即効性と実用性で4冊レビューしてきたが、このたび5冊目として扱いたいガイドを見つけた(4冊目)のでまとめてご紹介。 ■最初に結論 コンサル会社がやっている「コンサルティング」は、決まりきった手順や方法を粛々と実行しているに過ぎない。目標に対して泥臭いぐらい愚直に反応する。そうしたメソッドと沢山持って

    わたしが知らないスゴ本は、きっとあなたが読んでいる: いきなりコンサルタントに抜擢されたSEが読むべき5冊
  • オランダの光/監督:ピーター=リム・デ・クローン/2003蘭 - メタサブカル病

    オランダの光 [DVD] 出版社/メーカー: TCエンタテインメント発売日: 2005/07/08メディア: DVD購入: 2人 クリック: 14回この商品を含むブログ (45件) を見る オランダの光とは何か、昔と今では違うのか(干拓によって光の反射が変わったとか)、海外とは違うのか、そういったことを追う抽象的なドキュメンタリー。ここまで抽象的なドキュメンタリーは珍しいかも。でも、フェルメールには興味があるけれど、オランダの光そのものは見たこともない以上興味がないので、監督の動機や出演者の熱意がわかりません。 もちろんオランダの風景はひたすら美しく、オランダに行かねばなあという気にさせられるけれど、興味のフックとしてもっと理論的な話が多ければ面白かったかも。だから最後のほうにある実証実験はわくわくしました。 あと、これは完全にアナログで撮られているようなのだけれど、デジタル撮影を一切排除

    オランダの光/監督:ピーター=リム・デ・クローン/2003蘭 - メタサブカル病
  • こりゃあ!おもしろい!! - 物語三昧~できればより深く物語を楽しむために

    LDさんが言及していたので、気になって読んでみたが・・・こりゃああ面白い。自分のトラウマを化けものとしてひきだして、その化け物を倒すことが出来たら従えることができる・・・という設定が、ありがちだけれども。その造形美と相乗効果があり、秀逸。アートマン、という言葉出てくるが、これってインド哲学をベースに考えているんだろうと思うが・・・非常にレベルの低い二元論のバトルモノとして設定されながら、これ、相当展開の幅がありそう。続きが物凄く気になる・・・・。

    こりゃあ!おもしろい!! - 物語三昧~できればより深く物語を楽しむために
  • 『化けの皮』 『唄う骨』 戸田誠二著 権力と自由というものの本質へ - 物語三昧~できればより深く物語を楽しむために

    評価:★★★★★星5つやっぱりすごいよこれ(僕的主観:★★★★★+α星5つ) 一話読むのに、ものの10分。なのになぜ、こんなに心が震えるのか。 帯びのコメント 『ダ・ヴィンチ』編集長・関口靖彦 ちょっと読み直したら、感動で落涙してしまった。この記事は僕も好きなので、再掲です。とにかく、これ買って読んでみて下さいよ!(って・・・もうほとんど売ってないようですね・・・・僕の好きなはすぐ絶版になるなぁ・・・すんません・・・・)。何度でもお薦めします。これを読んでいないなんて、人生損です。かみ締めるように読んだ。僕にしてはめずらしい。手元においておきたい作品だ。帯びにあるように、簡単に読めるのに、世界の質に触れたようなおののきとともに引き込まれる。暗い、たしかに暗い作品だが、物凄い魅かれる。にもかかわらず、不思議な清涼感がある。ロシア中国、朝鮮、アイヌの古典からインスピレーションを得た(とい

    『化けの皮』 『唄う骨』 戸田誠二著 権力と自由というものの本質へ - 物語三昧~できればより深く物語を楽しむために
  • ASCII.jp:大人が聞くべき「初音ミク」最強20曲

    天使でも美少女でもない、ただひたすら「音源」なのだ ニコニコ動画の音楽ジャンルを独占しつづける「初音ミク」。人気曲を収録したCDも次々リリースされ、オリコンチャートにランクインしても驚かなくなってきた。だが、オリコンチャートでもそうだが、ランキング上位のヒット曲だけを聴いていると「ポップなキャラクターソングしか存在しないのでは」という先入観を抱いてしまいがちだ。 そのとき「いい年した大人が聴くものじゃないでしょ?」とすまし顔で済ませてしまうのは簡単だが、それはそのつど流行のものを聞き流しているという残念な事実を証明しただけだ。実際にニコニコ動画の中を探してみれば、初音ミクを「美少女」や「歌姫」ではなく、1つの「音源」としてとらえ、面白い音楽を作っている作家が山ほどいる。 そこで今回はASCII.jp編集部が独断と偏見により、「いい大人」が聞くべきと思われる初音ミクサウンド20曲を選んできた

    ASCII.jp:大人が聞くべき「初音ミク」最強20曲
  • asahi.com(朝日新聞社):【放送】どうかしていないか、僕らは? NYで見聞した草なぎさん報道 - メディアリポート - デジタル

    【放送】どうかしていないか、僕らは? NYで見聞した草なぎさん報道2009年6月10日 筆者 金平茂紀 何も自分だけは別の高みに立って、自分たちの「仲間」(こういう言い方を辛うじてしておきたいのだ、まだまだ)がやっていることに対して、他人事のように批評を加えて知らんぷりをするということではない。自分も含めて「共犯関係」にあると思うから、モノを言おうと思うのだ。僕は今、ニューヨークに住んでいて、日テレビや新聞にほとんど接していない。ネットであとから追体験もしようと思えばできるのだが、そういう気が積極的に起きないのだ。せっかくこの地にいるので、日の日々のメディア情報との間に敢えて一定の壁を設けてみようという気分もどこかにある。そんなことをしても、この情報越境時代にはいやが応でも伝わってきてしまう日のメディア状況というものがある。危機的だと思う。SMAPの草なぎ(なぎは弓へんに剪)剛さん

  • オールタイムベスト『この世界の片隅に』 - 漫棚通信ブログ版

    いやすごいものを読みました。 『夕凪の街 桜の国』(2004年双葉社)でヒロシマを描いたこうの史代。彼女が再度戦争にいどんだ作品が、ついに完結しました。 ●こうの史代『この世界の片隅に』上中下巻(2008年~2009年双葉社、各648円、amazon、bk1) 上巻・中巻で描かれるのは、昭和19年に広島から呉に18歳で嫁いできた主人公、すずの日常です。 絵を描くのが大好き、あわて者だけど明るくくじけない彼女の生活が、戦時下でありながらユーモアを忘れずにたんたんと描写されます。 しかしわたしたちは知っています。呉は軍港の街。昭和20年には空襲で壊滅的打撃をうけることを。そしてその八月にはヒロシマに原爆が落とされることを。 下巻で描かれるであろう空襲と原爆のときに向けて、上巻・中巻はゆっくりと時間を進めてゆく。 ですから、今回発売された下巻のカバーイラストを見て、まずはほっとするのです。ショー

    オールタイムベスト『この世界の片隅に』 - 漫棚通信ブログ版
  • Good night, Posterous

    Posterous Spaces is no longer available Thanks to all of my @posterous peeps. Y'all made this a crazy ride and it was an honor and pleasure working with all of y'all. Thanks to all of the users. Thanks to the academy. Nobody will read this.

  • Creative Failure Slumdog Millionaireを観て来た

    珍しく映画館に足を運んでまいりました.独りポツーンと映画を観ていると,とてもロンリーな気分になりそうなので,独りで映画館なんぞ行くもんじゃない,が日頃のポリシーなのですが,GeographyのクラスでExtra creditが貰えるというので,欲に目がくらんでしまったのが原因です.このように欲に溺れた人間は楽をする為の苦労は厭わないのです. 観て来たのはオスカーで何かと話題のSlumdog Millionaire.アメリカでのGeographyのクラスという事で,インドを舞台として,かつ近年のその急速な変化を捉えた映画なので,丁度良い題材だったのでしょう. さて,もちろん,ただ楽しむ為に観て来たのではなく,能動的に観て来たわけですから,これからこの記事で,この映画についてある事無い事書きます.ネタバレどころかシンボル,コンセプトからテーマ,エンディングの意味まで僕の理解する範囲で骨の髄まで

  • 深町秋生の序二段日記

    もう今年一位でいいよ! おくりびとなんか知るか!! さて「フェイクシティ」を二回も見てしまった。 二回も映画館に足を運んだのは「キル・ビル」以来だ。それぐらい好きな作品だった。私のために製作されたような。脚を担当したのがエルロイ御大ということで、公開前にこう書いたわけなのだが。 http://d.hatena.ne.jp/FUKAMACHI/20090213(エルロイ、永遠にえげつなく) 丸腰の犯罪者(コリアンギャング。「こんにちは」と日語で挨拶してワルなコリアンをわざとキレさせるという脚が秀逸。エスニシティのなんたるかを理解したエルロイ御大らしさが光る)をあっという間に撃ち殺して、死体にぐっと拳銃を握らせるアクションが飛び出して最高でしたね。 キアヌ演じるアルトラバイオレンス刑事トム・ラドローは「獣どもの街」にも登場している。「獣どもの街」の主人公リックの相棒として。このときのトム

    深町秋生の序二段日記
  • 大炎上 | まんがの作り方 1巻 百合漫画を描くために女の子同士でお付き合い

    『月刊COMICリュウ』連載、作/平尾アウリ「まんがの作り方」の第1巻 川口あすかは13歳で漫画家デビュー。その年齢もあって最初は人気が出たものの後は鳴かず飛ばずで消えていった。19歳になった今、再デビューを果たそうと決めたもののテーマがなかなか決まらない。そこでハヤリと言えばガールズラブだろうと、ネタの追求のためにバイト先で自分のことを慕ってくれているの森下(♀)と付き合い始めるといったお話。 実は森下はあすかが好きな人気漫画家だったことを後で知ります。その森下もあすかが昔 漫画を描いていたことを知っていた。このことが二人の仲を一層親密にさせるものとなってます。 絵は繊細な線画。背景があまり無いものですから線画がより目立ちますね。 帯に「漫画家と漫画家で百合ですけど何か?」とあったことが購入のきっかけになったわけですが、ハッキリ言ってあまり百合百合してません。キスをしなけりゃそれ以上の展

  • 人工無脳レビュー

    Fig. 1に最近の人工無脳の能力の、独断に基づいた分布を示す。横軸は学習能力、縦軸は文脈追跡能力を示している。近年この勢力図は大きく変わった。マルコフ文生成を行なう人工無脳の一派の台頭と、限定的ながら論理を追跡して会話に反映させる人工無脳の技術の出現である。かつて人工無脳の代名詞と考えられていた辞書型はいまや旧世代のアーキテクチャに属し、その範疇では新しい技術開発が停滞している模様である。ログ型アーキテクチャは以前から存在していたのだが、いつの時代にもあまり大きな勢力にはなっていないようである。これらの情勢の変化はマシンパワーの増大と人工無脳業界への形態素解析器の導入に伴って生じたと考えられる。以下に各人工無脳の特徴を簡単に述べる マルコフ文生成型 マルコフ連鎖を用いて文を生成する。後述の辞書型人工無脳は辞書を拡大することでよい反応をするようになるが、マルコフ文生成型は逆で、生成する文の

  • 巨人譚 - 情報考学 Passion For The Future

    ・巨人譚 私が一番好きな漫画家 諸星大二郎の新刊。 巨人がキーワードになる神話や伝承をベースにした過去作品に、新たに書き下ろしたギルガメシュ叙事詩をテーマとした作品を加えた作品集。初出は1979年から2008年の30年に渡り「西遊妖猿伝、海神記と並ぶもう一つの野心的なライフワーク」と帯にうたわれているのだが、巨人が登場しない作品や中国伝奇モノまで含まれており、ひとつのシリーズとしては寄せ集め感が漂う。 だがでっちあげシリーズとはいえ、神話伝承を得意とする作家なので、個々の作品はもちろん面白い。スケールが壮大。タッシリナジェールの壁画「白い巨人」が描かれた一の短剣が共通して登場する。短剣はギルガメシュやテーセウス、オデュセウスら各文明の英雄達の手によってメソポタミアからクレタへ、リビア、サハラ砂漠へと人類の歴史の黎明期を漂っていく。 やはりプリミティブな世界を描くと諸星大二郎の持ち味がいき

  • 「感動した!」とか言ってる奴はキチガイだ!という映画「グロテスク」 - ゾンビ、カンフー、ロックンロール

  • 古川日出男的地図作成術――来るべき古川論のために - 感情レヴュー

    ある意味承前*1 古川日出男の作品には、頻繁に地図が参照され、地名が記述される。しかし古川的地図は、その土地固有の風土をもたない。物語の背景として記述される地図・地名には、作中人物がかつて生活してきた記憶や痕跡をとどめないし、今後も生きるべき参照枠として固有の付加価値を持たない。それが古川的地図。 ここでおさらいをしておくと、そのような土地固有の風土を最終的に無効なものとして処分したのは、文学史上、後藤明生の「団地」と中上健次の「路地」だとされる。そしてそれ以降、そのような更地化した地図の上に、架空の物語を注入し、記号論的な都市空間やテーマパークを演出する試みがいくつかなされてきたのだった(村上春樹の「ジェイズバー」「神戸」から島田雅彦の「郊外」「ロココ町」など)。 しかし古川的地図に記述される地名はそのどれでもなく、無機質なものだ。作中人物が動く線と線を結ぶ交点として、あるいはエピソード

    古川日出男的地図作成術――来るべき古川論のために - 感情レヴュー