『アンネの日記』を図書館で借りて読んだのは、小学校二年のときだった。たちまち夢中になったが、おそらく当時引かれたのは「隠れ家」とか、日記に名前をつけて呼びかけるとか、そんなところだったのだろう。机の下にもぐって、そこを秘密の隠れ家に見立て、ナチスにつかまらなかった「もうひとつのアンネ・フランクのストーリー」を頭の中で繰りかえし考えていたような記憶がある。 学校では週に一時間だったか二時間か、フランス語の授業があって、その時間は黒い服に身を包んだ外国人のシスターが授業をしてくれた。一年で教わったフランス人のシスターが、背も低く、顔も手も何もかもが丸かったのにくらべ、二年になって教わったドイツ人のシスターは、背が高く、高い鼻は鷲鼻で、顔も体もごつごつと骨張った人だった。フランス人のシスターがほとんど日本語が話せなかったのに対し、この人は日本語が大変上手で、授業の合間にさまざまな話を教えてくれた
186~7頁に地図がある。ドイツからいまの東欧にかけて発疹のような大小の点がつけられている。大きな印はダハウ、マウトハウゼンなど13、アウシュビッツ、ソビブル、マイダネクなどの「絶滅収容所」と記されたのは6、それぞれの周辺を、支所や強制労働キャンプを示す小さな粒々の「・」が衛星のように取りまいている。東方にいくほど数は密集し、著者が示すその理由を知れば暗澹とせずにはいられない。 本書は、ヒトラー政権下のナチス・ドイツによって行われた、ユダヤ人の大量殺戮=ホロコーストについての生真面目な研究書だ。 いろいろ発表したいことはあったようだが、著者は殺戮が如何にして実行されていったのか、その過程の記録に絞っている。伝えたいのは、平常なら起こり得なかったであろう「悪魔の行い」を人間がなぜ為しえたのか。 犠牲者の数は、少なく見積もっても500万人。調査によっては600万人(そのうち子供は100万人を超
いやあ、とにかく長かった。 しかし、難しいことは全然書いていなくて、読みやすい文章なので、非常にさらさらと読める。本が重たい*1ことを除けば、長さはあまり気にせずに読むことができると思う。 あと、何度も何度も同じことが繰り返し出てくるので*2、またそれね、という感じで読んでいける。 この本の大きな主張としては、 まず、戦後思想とは、戦争体験の言語化である、ということ。 次に、新しい思想であっても、古い「言葉」を使って表される、ということ。 そして、一口に戦後と言われるが、それは大きく二つに分けられる、ということ。 第二次大戦によって、多くの日本人が衝撃的な体験をすることになった。 その言葉を絶するような体験を如何にして言語化していくか、それが戦後思想である。 そしてその言語化の際、どのような言葉を使うかというと、それは実は戦中、戦前の言葉であったり、「近代」とか「革命」とかいったヨーロッパ
異色の少年犯罪本、ネット発で好評 2008年02月09日 「戦前の少年犯罪」(築地書館)が注目を集めている。発売3カ月で5刷が決まるなど、この種の本では異例の売れ行きで、すでに6500部。ネット上のサイトで発信してきた情報をもとにした本で、データの検証も呼びかける。(アサヒ・コム編集部) 戦前の少年犯罪(築地書館) 少年犯罪データベース 著者は2001年からインターネットサイト「少年犯罪データベース」を主宰している。実名は明かしていない。 サイトでは、戦前に起きた少年犯罪を過去の新聞記事を引用して紹介してきた。少年犯罪の専門家ではない著者だが、図書館で新聞記事を読むという作業を繰り返し、情報を増やしてきたという。 サイトでは「間違いの指摘は歓迎します」と記述する一方、今日の少年犯罪を報じるマスコミや識者に対し、戦前の凶悪な少年事件への検証が不十分ではないかと、疑問を投げかける。 具体的なデ
さて、前に加藤陽子さんの本を紹介してから随分間が開いてしまったが、また日中戦争がらみで。といってもこちらは一応満州事変からの動きもフォローされているものの、その焦点はどちらかといえば開戦から戦線が次第に泥沼化していく過程に当てられている。加藤さんの本が新書とはいえ3回頭から読み直さないと頭に入らなかったのに対し、こちらは帰りの電車の中の30分でサクッと読めた。この違いは何を意味するのか? というわけで感想もサクッと。 ・宣戦布告もないままに始められ、そのままずるずると長期化・泥沼化していく日中戦争の本質を、あくまで「殲滅戦」を戦おうとした日本と、初めからこれは「消耗戦」であるという認識を持っていた中国という対比から明らかにしようとする本書の記述はとにかく分かりやすい。特に、汪兆銘政権の位置づけについてここまで分かりやすく説明した啓蒙書は今までなかったのではないだろうか。 ・本書ではさらにそ
和解のために 教科書、慰安婦、靖国、独島 作者: 朴裕河,佐藤久出版社/メーカー: 平凡社発売日: 2006/11/21メディア: 単行本購入: 4人 クリック: 96回この商品を含むブログ (13件) を見る 韓国からの留学生の友人の話では、今の韓国では日本思想が大ブームだという。特に柄谷行人は、韓国語に翻訳されたものも多く、「今、一番注目を集めてる思想家」らしい。 朴さんは、そんな韓国で日本文学を研究している。柄谷行人や夏目漱石の翻訳を手がけてきた。そして、5年前に『反日ナショナリズムを超えて』を出版し、賛否両論を読んだ。さらに、2005年に上記の『和解のために』を刊行したのだ。 『和解のために』で、朴さんは「教科書」「慰安婦」「靖国」「独島」*1の4つの、多くの研究者が避けて通りたがる問題に、真っ向から取り組んでいる。日本の動きと、韓国の動きを同時に描き出しながら、お互いに誤解をした
2007年06月09日17:45 カテゴリ書評/画評/品評Math 書評 - πの歴史 πの歴史、というより、πで歴史かπと歴史というタイトルの方がふさわしそうな本。 πの歴史 Petr Beckmann 田尾陽一 / 清水韶光 本書「πの歴史」は、πそのものを学ぶ、というより、πを通して著者Petr Beckmannの史観につきあうという本。その独特の史観は読者によっては毒が強すぎると感じるかも知れない。例えば以下の下りを見て、本書が数学史の本であることがわかる人がいるだろうか。 p. 093 ローマは、組織された強盗集団の最初の国でも最後の国でもない.しかし,後の時代の世界中のほとんどの人々をだまして,賞賛するようしむけた点では、唯一の国でもある.理性ある人間であるなら,フン族やナチスやソヴィエトをほめたたえることはないだろう、ところが,何世紀にもわたって,学校の生徒たちは,ユリウス・
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