ただ今企画展示室で開催中の『襖と屏風−暮らしを彩る大画面の美−』展は、館蔵品の中から襖(ふすま)絵と屏風(びょうぶ)絵ばかりに的を絞って、その魅力を紹介しようとする展覧会です。襖と屏風はいずれも、壁に掛けられる西洋の絵画(タブロー)とは異なり、建築を彩る調度、実用品として暮らしの中で受け継がれてきた、日本絵画の基本的な形式です。けれどもマンション住まいの人も増えた現代では、この両者、特に屏風は人々にとって馴染みの薄いものになっています。 そこでこのシリーズでは、屏風をもっと深く、そして広く鑑賞するための基礎知識について、幾つかのポイントをご紹介してゆきたいと思います。 屏風は白鳳時代(645年の大化の改新から710年の平城遷都までの時代)に、中国から日本に伝わったと考えられています。「風を屏(ふさ)ぐ」という名前が表わすように、屏風は本来は風や人目を遮るための調度ですが、同時に権威ある者の