「著作権は文化を発展させるのか」 [著]山田奨治 15年ほど前、私は映画評論の本を刊行したことがある。作品写真を使いたかったが、使用料が多額になるので、文字ばかりの本になった。当然売れなかった。 私怨(しえん)ではないと思いたいが、「著作権は文化を発展させるのか」という題に引かれた。著者の山田さんはこう書き出す。「日本の著作権法の目的は、『文化の発展に寄与すること』にある。ところで、『文化の発展』とは何だろうか?」 著作権法とは、文化の作り手を、権利者として守るために存在する。そこに異を唱える人はほぼいまい。問題は、作り手の権利が強すぎて、受け手の権利がないがしろになっていないかという点である。そうなると、角を矯めて牛を殺すことになりかねない。 法律上の権利は基本的にお金に換算される。お金の魔力とは恐ろしいもので、いつしかお金が価値のすべてになっている。数字に化けた「文化」はもはや「本来的